ワクチンにも種類がある。生ワクチンと不活化ワクチンのお話

ワクチンの予防接種。
ワクチンの予防接種。 / Credit:pixabay
reference: the guardian

現在世界中の研究者たちが急ピッチでCovid-19に対するワクチン開発を進めていますが、ワクチンが完成すればもう何も心配はいらないのでしょうか?

かつて世界で猛威を奮った感染症「ポリオ」は、予防接種の成果によってほぼ野生のウィルスはいなくなったと言われています。しかし、代わりにワクチン由来のウィルスがアフリカやアジアで増えつつあるというニュースがあります。

ポリオで聞かれるワクチン由来のウィルスとは一体なんでしょう? ワクチンにはどのような種類があり、どのようなメリット、デメリットが潜んでいるのでしょうか? 関心が高まっているこの機会におさらいしておきましょう。

ワクチンは何をするものか?

ワクチンは安全なウィルス。
ワクチンは安全なウィルス。 / Credit:depositphotos

ワクチンとは毒性を弱めたウィルスや、病原を体内に入れて身体が安全に抗体を作れるようにした薬です。

病気はお医者さんが治してくれるというイメージがありますが、実際医療にできることは身体が病気を駆逐するためのサポートをすることだけです。

病気を治すには、身体の免疫系が自らの力で病原に打ち勝つ以外にありません。

そのために必要となるのが、各病気に対する「抗体」です。対応するウィルスへの抗体があれば、身体は病原を体内で増殖させることなく、毒も無効化させて殲滅することができます。

ただ、抗体を作るためには病原を調べて攻略する必要があります。獰猛な敵を戦いながら相手を調べるのは至難の業です。

ワクチンを使った予防接種は、そんな攻略を安全に行うため無力化させた敵を体内に送り込んで抗体を作っているわけです。

このワクチンには2つの種類があります。1つは生ワクチン、もう1つは不活化ワクチンといいます。

生きたウィルスを使う「生ワクチン」とウィルスはいない「不活化ワクチン」

生ワクチンには無力化した生きたウィルスが入っている。
生ワクチンには無力化した生きたウィルスが入っている。 / Credit:pixabay

生ワクチンは病原性を弱めて無力化した生きたウィルスを使うワクチンです。

当然生きているので体内で増殖したりしますが、病原性を失っているため病気を発症することなく身体がウィルスに対する抗体を作ることができます。また、生きたウィルスを使っているのでしっかりした抗体が作れます。

麻疹(麻しん)ワクチンは生ワクチンの代表で、2回の予防接種で生涯免疫が作れるとも言われています。また、一時期コロナウィルスに有効なんじゃないかと言われたBCG(結核菌)ワクチンも生ワクチンです。

一方、不活化ワクチンは、生きたウィルスは含んでいないワクチンです。病気の問題となる成分だけを抜き取って作られているワクチンで、こちらも安全に抗体を作ることができます。

ただ、不活化ワクチンは部分的な成分しかなく、生きたウィルスを直接含んでいないため、免疫の効果期間が短く、きちんとした抗体を作るためには、複数回予防接種を受ける必要が出てきます

日本脳炎ワクチンはこの不活化ワクチンです。なので日本脳炎の予防接種は4回くらい受けるのが通常です。

インフルエンザワクチンも不活化ワクチンです。

こうして聞くと、生きたウィルスを使う生ワクチンの方が効果が高そうで良いようにも感じます。しかし、生ワクチンには危険も潜んでいます。

映画「ジュラシック・パーク」などのように自然の生き物をいくら人間が無力化させて安全に管理していると思っていても、彼らは活路を見出して人間たちに反抗することがあります。

生ワクチンのウィルスも、ときに変異を起こして本来の病原性を取り戻すことがあるのです。稀にワクチンを打ったら病気が発症してしまったというのも、この変異が原因です。

こうした生ワクチンの問題は、現在でもポリオワクチンの使用で表面化しているといいます。

ポリオウィルスと生ワクチン

経口生ポリオワクチンの投与の様子。
経口生ポリオワクチンの投与の様子。 / Credit:Wikipedia

ポリオウィルスは、腸管から脊髄に入り「ポリオ (急性灰白髄炎) 」と呼ばれる病気を引き起こします。通常は胃腸炎のような症状で済みますが、脊髄に入り込むことから重篤な場合には生涯治らない麻痺を身体に残すため恐れられています。

このウィルスは人の唾液や糞便を通じて広がっていきます。ノロウィルスでも似たような経路で感染の拡大がありましたが、ポリオウィルスも糞口経路で感染が拡大します。

ポリオウィルスは先史時代から存在する古いウィルスと言われていますが、20世紀になってから世界各地で大流行を起こしました。1950年代から60年代にアメリカでは3万人近い感染者が出て6000人近くが死亡したと言われています。

当時は映画館が閉鎖され、集会や会合はなくなり、都市部の住人は山間部のリゾート地へ逃げ出したと言われていて、現在のコロナの混乱に似た状況が発生していました。

このポリオの大流行を止めたのがポリオワクチンです。日本でもポリオは大流行していましたが、ポリオウィルスの生ワクチンを使って解決した歴史があります。

現在野生のポリオウィルスはほぼいなくなったと言われていて、その被害もなくなっています。

しかし、このポリオワクチンでは、ワクチンの接種によって稀に麻痺の症状が出てしまう人がいました。それが生ワクチンの問題です。

そして、この変異して病原性を取り戻したワクチン由来のウィルスは糞便を通じて再び広がってしまうという事態を引き起こしたのです。

主にこの被害にあっているのはアフリカやアジアの貧しい地域です。ここでは予防接種を受けることができた人と、未だに受けれていない人たちがいます。

野生のポリオウィルスはほぼ撲滅されたのに、ワクチン由来のウィルスが予防接種を受けていない人たちに広まってしまうということが起きたのです。

不活化ワクチンの利用

こうした事情で、ポリオワクチンは現在不活化ワクチンへ切り替えている国がほとんどです。ただ、貧しい国では経口で数滴飲むだけでいいポリオ生ワクチンの利用を完全にやめることが難しいのも実情と言われています。

また、こうした背景から、現在開発されているコロナウィルスのワクチンも、不活化ワクチンです。

そのため実用化された後に、生ワクチンに起きるような問題を心配する必要はないでしょうが、1つの病気を封じ込めることの難しさを示しているといえるでしょう。

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