「宇宙の始まり」を実験室で再現? 量子実験でインフレーションと似た現象を確認

space 2018/04/28
 
Point
・量子効果を示す状態の原子雲を膨張させることで、インフレーションを再現
・インフレーションで起こると考えられているハッブル摩擦を観察
・インフレーション後の物質や放射を生み出した状況を示唆

 

超低温の原子雲を膨張させる実験で、初期宇宙で発生した現象との類似性が示されました。

A Rapidly Expanding Bose-Einstein Condensate: An Expanding Universe in the Lab
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevX.8.021021

宇宙の始まりには様々な仮説がありますが、現在主流なのが、宇宙が急激な膨張(インフレーション)から始まったとする「インフレーション宇宙論」です。

今回の研究では、量子の振る舞いと、初期宇宙のインフレーションの間にある関連性を、実験によって確かめました。研究者らは、超低温でボースアインシュタイン凝縮状態(BEC)の原子の雲をドーナツ状に拡大させる中で、音波を伝播させてその波動の有様を観察。その結果は、理論上での予測に合致していると同時に、新たな見方を科学者に与えるものでした。

ボースアインシュタイン凝縮とは、ある転移温度以下で巨視的な数のボース粒子が、最低エネルギー状態に落ち込む相転移現象のことです。粒子は同調し、まるで一つの量子であるかのように集団的に量子効果を引き起こします。インフレーションは、宇宙の始まりに起きた指数関数的な膨張のことで、そのエネルギーが現在の物質や、あらゆるエネルギーを産んだと考えられています。しかし、どのようにそのエネルギーの残滓が今日の物質に変わったのかは、まだわかっていません。

論文の著者である物理学者ステファン・エッケル氏は、一つの実験群では、ハッブル摩擦として知られる過程で、膨張する空間の中で広がる波が、空間によって引き伸ばされ、エネルギーを奪われるという現象について調べました。実験では、インフレーションとの類似条件を作るために音波を使いました。音波はBECのリングの中の原子の密度を変化させて伝播し、初期宇宙の波動の代りをします。実験の結果は、予想どおりで音波は引き伸ばされ、振幅は減少しました。計算によるとこれは、ハッブル摩擦による減少と同じものでした。

二つ目の実験群では、BECを音波にはさらさずに膨張させ、それが安定するまでうろうろする様を見ました。この場合も、膨張はインフレーションの様を見せました。BEC内で、膨張するエネルギーは、リングを伝わる音波のような物に素早く変化。その現象について初期に推測されていたことは正しいと思われました。しかし、正しくエネルギーを伝達していると予想できるまでには、まだ達していません。そこで、チームは数値的なシミュレーションを使って、もっと物理的に完全なイメージを描きました。

そのシュミレーションによって現れたエネルギー転換の説明は、複雑なものでした。膨張が止まった後、リングの外側の縁にある原子は境界にぶつかり雲の中心へと跳ね返って行きます。そこで、まだ外に向かって伝播している原子を妨害し、その真ん中に原子が生存できない部分ができます。その領域の両端にある原子は、同調していない2つの隣り合った時計のように、量子特性の不釣合いがおきます。この状態は極めて不安定であり、最終的には崩壊し、雲の中に渦を生み出します。これらの小さな量子的渦巻きは、分解してリングを駆け回る音波を生み出すこともあります。それはインフレーション後の残滓が粒子や放射を生み出したかのようです。

ハッブル摩擦における類似性の場合とは違って、ダブついた原子が多くの量子渦巻きを生み出せるという複雑なストーリーは、インフレーション後に実際に起ったこととは全く類似性がないかもしれません。しかし、実験で示された結果は、理論家に新たなインスピレーションを与えるでしょう。研究者たちは、今回の実験で使われた系に触発された理論家が新たな実験を提唱するのを心待ちにしています。

 

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via: Science Daily/ translated & text by SENPAI

 

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