ウンチを固める場所と、四角形にする場所が別々だった!
ウォンバットは、オーストラリアに生息する夜行性の哺乳類で、昼間を地下トンネルで過ごし、夜にエサを求めて出歩きます。
一晩に100個近くのウンチをし、その大半が四角いキューブ型です。
「どうして丸い肛門から四角いウンチが出るのか。」
この謎を解き明かすべく、2018年に、車にはねられて亡くなったウォンバットの遺骸を解剖し、腸の構造が調べられました。
その結果、腸内に、周囲の組織とくらべて伸縮性の強い溝状の構造が2つ見つかったのですが、その機能まではわかっていません。
しかし今回の研究で、さらに2体のウォンバットを解剖することで、腸内の筋組織層に、さまざまな厚みや硬さをもつ領域の発見に成功しました。
チームは、それをもとに2Dの数学モデルを作成し、それらの領域が消化のリズムに合わせて伸縮する様子をシミュレートしています。
すると、ウォンバットの腸は、他の哺乳類と動きがまったく異なることが判明しました。
多くの哺乳類に見られる腸の動きは、筋組織による伝播性の収縮波があらゆる方向で一貫していますが、ウォンバットではそれが不規則だったのです。
筋組織の硬い場所では、収縮スピードが速く、便を瞬時に固めます。
一方で、筋組織の柔らかい場所では、ゆっくりとした収縮スピードで固めた便をキューブ型に整形していました。
シミュレーションの結果によると、便が四角形にされるのは腸の終わり17%の範囲でした。
ウォンバットは食べたものの消化に2週間以上を要し、水分や栄養素のほとんどをそこから抽出します。
そのため、排出されたウンチは水分がなく、極度に圧縮されています。
この傾向は野生下ほど強く、水が簡単に手に入る飼育下では、ウンチがキューブ型にならないことも多いそうです。
一方で、ウォンバットが四角形のウンチをする理由については、いまだ断定できる答えがありません。
現在の有力な説は、ウォンバットが、その縄張り意識の強さから、一種のサインとして四角いウンチを置くというものです。
ウォンバットは、不安定な岩や丸太を縄張りにすることが多く、四角いウンチだとそこから転がり落ちることがありません。
また、自然界に見られない形なので、一目でウォンバットの縄張りだと判断できます。
ただこれはあくまでも仮説のレベルであり、真の答えを知るのはウォンバットのみでしょう。