黄金の舌は「オシリス神との対話」のため?
同大学の研究チームは、タップ・オシリス・マグナ神殿で10年以上も発掘作業を続けています。
その最大の目的は、かの絶世の美女・クレオパトラ7世(紀元前69〜紀元前30年)の墓を見つけることです。
クレオパトラは、同神殿が建設されたプトレマイオス朝時代の最後のファラオであり、神殿内に埋葬されている可能性が高いと言われています。
実際に遺跡からは、彼女の顔が彫られたコインが複数枚発見されています。
今回の調査では、遺跡内に岩を切り出して作った墓地が発掘され、そこで新たに複数体のミイラが発見されました。
「黄金の舌」をもつミイラもそのうちの一体です。

このミイラは、頭蓋骨や骨格の大部分が無傷のまま残されており、保存状態がきわめて良好でした。
黄金の舌は、遺体の防腐処理中に故人の舌を切り取ったあと、金で作られた舌に置き換えられたと見られます。
その目的について、研究チームは「故人が死後の世界で、冥界の神であるオシリスと会話できるようにするため」と推測します。
オシリスは、死者の魂を裁く神であり、ミイラの処理人たちは「黄金の舌をもつことでオシリスに慈悲をこうことができる」と考えたのかもしれません。
しかし、なぜ金にしたのかは不明ですし、これとは別に、このミイラが生前に発話障害をもっていた可能性も指摘されています。



また、この他にも、石で作られた埋葬用の仮面(デスマスク)や石像などが見つかっています。
これらは死者の顔をかたどったものと見られ、時の経過で腐敗しているミイラも多いため、生前の姿を垣間見るのに有用です。
アレクサンドリア古美術長官のKhaled Abo El Hamd博士は、声明の中で「今回の発掘では、約2000年前の古代ギリシャ・ローマ時代に遡る遺物の中でも、きわめて重要な考古学的発見がなされました。
これらのデスマスクや石像は、当時の職人たちが非常に高い彫刻技術をもっていたことを示す」と述べています。