麻酔薬の経口投与は患者を慢性的な自殺願望から解放する
麻酔薬の経口投与は患者を慢性的な自殺願望から解放する / Credit:Depositphotos
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口から摂取する「麻酔薬」に自殺願望を減少させる効果があると判明

2021.02.11 Thursday

精神的な問題を抱える人は、慢性的な自殺願望に悩まされることがあります。

実際、アメリカでは自殺率が高まっており、子供たちも例外ではありません。

オーストラリア・サンシャインコースト大学に所属する神経生物学者ダニエル・ハーメンス教授ら研究チームは、麻酔薬として用いられるケタミンが自殺願望を減少させると発表。

以前からケタミンの効果は注目されてきましたが、今回は新しくケタミンの経口摂取における効果が試され、治療6週目に患者の69%が自殺願望の減少を示しました。

詳細は、2月4日付の科学誌『Translational Psychiatry』に掲載されています。

Oral Ketamine Experiment Reduces Suicidal Thoughts in Over Two-Thirds of Patients https://techandsciencepost.com/news/science/oral-ketamine-experiment-reduces-suicidal-thoughts-in-over-two-thirds-of-patients/
Low dose oral ketamine treatment in chronic suicidality: An open-label pilot study https://www.nature.com/articles/s41398-021-01230-z#ref-CR18

自殺願望と従来のケタミン治療

人はうつ病などによって、具体的な理由なく漠然と死を願う状態に陥ることがあります。その状態は慢性的に続く場合もあり、長年多くの人を苦しめてきました。

これまで自殺願望を減少させるために抗うつ薬が利用されてきましたが、うつ病患者の30%が少なくとも2種の抗うつ薬に効果を示しませんでした。

またいくつかの研究では「自殺傾向はうつ病や他の症状とは独立したものである」との見解も出てきています。

そのため近年では、従来の抗うつ療法とは異なる「自殺願望治療」が必要とされてきました。

従来のケタミン治療は静脈注射だったが、新しい研究では経口タイプのケタミンが試される
従来のケタミン治療は静脈注射だったが、新しい研究では経口タイプのケタミンが試される / Credit:Depositphotos

そして現在注目されているのが、1950年代以降、全身麻酔薬および鎮痛薬として医療のために広く用いられてきた「ケタミン」です。

さまざまな研究により、ケタミンには重度のうつ病治療に効果があると判明。

さらに新しい研究では、ケタミンが自殺願望を大幅かつ迅速に減少させるとも分かりました。これは従来の抗うつ薬では達成できなかったことです。

ただし、それらケタミン投与研究のほとんどは「静脈への注射」による成果です。注射投与は実行可能ですが、費用がかかり、時に合併症を引き起こすおそれがあります。

そのためハーメンス氏ら研究チームは、より簡単で安価な方法である「経口投与ケタミン」の研究をおこないました。

次ページ経口ケタミンによって患者の3分の2以上は自殺願望から解放される

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