オスとメスの「食べ合い」は生物初!子育てのためか?
クチキゴキブリは、日本〜台湾の東南アジアの森林域に生息する種で、朽木を食べながら掘ったトンネルの中で暮らしています。
「子育て」をする昆虫として有名で、子が成虫として巣立つまでは一緒に暮らします。
一家族に10〜20匹の子どもがいるので、子育てはかなり大変だとか。
また、オスとメスは、一度ペアになると一生を共に過ごす「一夫一妻」と考えられています。
日本では九州以南にのみ分布しており、本研究で対象となったのは、沖縄に生息する「リュウキュウクチキゴキブリ」です。
翅の食べ合いは、毎年4〜7月の繁殖シーズンに行われます。
新成虫として朽木から巣立った個体は、空を飛んでパートナーを探し、良き相手に出会うと互いに翅だけを食べ合います。
食べ合いが終わるまでに最低12時間、長ければ3日もかかるようです。
翅は再生しないため、オスとメスは死ぬまで飛べなくなります。
この食べ合い行動は、従来の行動学からすると、「性的共食い」か「婚姻贈呈」と捉えられます。
性的共食いは、カマキリのメスが交尾後にオスを食べたりする行動で、婚姻贈呈は、主にオスがメスに贈り物をし、交尾相手として認めてもらう行動です。
しかしこれらはともに、一方が他方を食べる、あるいは贈り物をする一方向的なものでしかありません。
対照的に、クチキゴキブリの食べ合いは、双方向的なものです。
こうした互いにギフト交換するような行動は前例がなく、性的共食い・婚姻贈呈の枠組みだけでは説明がつきません。
交尾時に見られる行動なので、繁殖と密に関係していると予想されます。
一説では、両親で子育てをするため、翅をなくすことで互いに育児放棄できないようにしている可能性があるとのこと。
しかし、それを証明するには、まだまだ研究が必要のようです。
クチキゴキブリは、生物の中でもオスとメスの絆が最も深い生き物なのかもしれません。