巨大ザメと同等、過去最大のシーラカンスか?
化石は、モロッコの都市ウェドゼム(Oued Zem)近くのリン酸塩鉱床から出土したものです。
買い取ったコレクターは当初、ジュラ紀後期に生息していた「プテロダクティルス」の頭蓋骨と推測し、同大学に調査を依頼しました。
しかし、分析の結果、薄い骨板がいくつも集まってできた、シーラカンスの肺周辺の化石と判明しています。

シーラカンスは、恐竜の出現より2億年以上も早い、約4億年前に現れた魚類です。
その後、約6600万年前の隕石衝突によって恐竜とともに絶滅したと考えられていましたが、1930年代に南アフリカ沖で生きた個体が発見されました。
それ以来、「生きた化石(living fossil)」として、世界中に知られるようになります。

同チームによると、化石は約6600万年前のものであり、肺の大きさから少なく見積もって、全長4.8メートルに達していたと見られます。
研究主任のデビッド・マーティル氏は「これまで発見されたシーラカンスの化石の中で、最大クラスの一つに数えられるでしょう」と述べています。
依頼したコレクターは、プテロダクティルスでなかったことで落胆しているそうですが、モロッコで発見された初のシーラカンスの化石でもあり、古生物学的には非常に貴重な資料となっています。

古・中生代のシーラカンスは、世界中の浅瀬や淡水域に広く分布し、交互に動かせる肉厚のヒレで、水中の地面を這うように移動できました。
大きな肺も特徴の一つであり、酸素を取り込む呼吸器として役立っていたと見られます。
こうした特徴を備えた魚類群が、陸上へと進出し、四肢動物へと進化していったのです。
研究チームは「この大きな肺が、6600万年前の大量絶滅の危機を乗り切れた理由の一つかもしれない」と話します。

現生する2種のシーラカンスは、いずれも深海に拠点を移しており、体長も最大で約1〜2メートルと小型化しています。
彼らが何を食べ、どのように繁殖し、どれくらい生き残っているかについては、ほとんど分かっていません。
これまで、シーラカンスは数億年の間、まったく姿を変えていないとされていましたが、近年では、遺伝子的に少し進化していると考える向きもあります。
ともかくも、話題の尽きない生物として今後も注目が集まりそうです。
本研究で調査された化石は、モロッコのカサブランカにあるハッサンII大学に所蔵されています。