「先進国は植物性の人工肉を取り入れるべき」
地球温暖化の大きな原因は、あらゆる産業分野から排出される「温室効果ガス」にあります。
実は、その中でも特に排出量の多いのが農業分野です。
排出量は全体の24%を占めており、電力分野の25%に次いで2位につけています。
主な排出ガスは、作物の栽培(家畜のエサにもなる)から来るメタンガスや亜酸化窒素、そして、家畜自身のオナラやゲップ、フンなどです。
これらの排出ガスは普通より環境への害が大きく、一般的な二酸化炭素の温室効果にくらべて、メタンガスは21倍、亜酸化窒素は296倍に達します。
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そのため、いくら他の分野で排出ガスを減らしても、農業分野で改善しないかぎり、大きな効果は得られません。
そこでゲイツ氏は、自身が支援するアメリカのバイオテクノロジー企業「Pivot Bio」の取り組みに期待を寄せています。
作物の栽培には、栄養分として窒素肥料が土壌に散布されます。
植物に吸収されなかった窒素は、地中で化学反応を起こし、有害な亜酸化窒素へと変化。これが大気中に放出されることで、温室効果ガスとなります。
しかし、むやみに窒素肥料を減らせば、作物が育ちません。
そこでPivot Bioは、微生物の力を利用して栄養素を作るバイオ肥料「Pivot Bio PROVEN」を開発しました。
これにより、亜酸化窒素の排出量を大幅にカットすることに成功しています。
さらにゲイツ氏は、食肉産業において、企業「Impossible Foods」や「Beyond Meat」に注目しています。
両社は、細胞培養ではなく、完全植物性の人工肉を製造しており、ゲイツ氏も出資しています。
完全植物性とは、食肉の主成分を植物から抽出したもので代替えすることを指します。
その成分は、水・脂肪・タンパク質・ミネラルです。
すでにソーセージやハンバーグ用のパティなどが製造され、一般向けに販売されています。
しかも、タンパク質の含有量は、本物の食肉よりも多く、それでいてコレステロールはゼロです。
また、製造プロセスでの水や土地、電気エネルギーの利用量、および排出ガスを大幅に削減できます。
ゲイツ氏は「経済の豊かな国はすべて植物性の人工肉に移行すべきです。味の違いにはすぐに慣れますし、人工肉は今後さらに改良されていくでしょう」と話します。
現時点で、植物性の人工肉の製造規模は、世界の食肉産業の1%にも達していません。
しかし、人工肉を採用する国が増えれば、その分、温室効果ガスの排出量は大きく減っていくでしょう。
それでも、「本物の肉を食べたい!」という私たちの気持ちは消えないでしょうね。