「アルビノ」でも「リューシズム」でもない可能性
2019年当時、アダムス氏と写真家チームは、約2ヶ月にわたる撮影旅行に出発し、12月にサウスジョージア島に立ち寄りました。
アダムス氏は「仲間とともに撮影準備をしていたところ、海岸に向かって泳いでくるペンギンの群れに出くわした」と話します。
その中で、1羽のペンギンが彼らの目に留まりました。
アザラシやオットセイの他、無数にいるペンギンたちの中を悠然とまっすぐに歩いてくる黄色いペンギンが発見されたのです。
「浜辺には12万羽ほどのペンギンがいて、黄色い個体はその1羽のみでした。これまで黄色いペンギンは見たことも聞いたこともなく、非常な幸運に恵まれたと思いました」と同氏は述べています。
これは「オウサマペンギン(学名:Aptenodytes patagonicus)」という種で、普通は近縁のコウテイペンギン同様、白黒の体色に黄色がかった輪模様が首元にあるのみです。
ところが、このペンギンは黒色色素がまったくなく、羽やクチバシは薄黄色で、首元から頭部にかけては濃い黄色をしていました。

原因は、羽毛などのサンプルを採取して調べなければ特定できないものの、現時点で「アルビノ」か「リューシズム(白変種)」の可能性が高いです。
アルビノは、遺伝情報の欠損により先天的にメラニン(色素)が生成できないため、皮膚や体毛が白色化します。
また、全身にわたってメラニンが生成されないので、瞳の色も抜け落ちることが特徴です。
一方のリューシズム(白変種)は、メラニンの生成能力は正常なのですが、色素の異常減少により体毛だけが白色化します。
そのため、瞳の色は通常個体と同じ黒色のままです。

ペンギンを見ると、瞳の色まで抜け落ちているので、アルビノの可能性が高いですが、注意すべきは黄色い色素が残っていることです。
アルビノペンギンは過去にも報告例が複数ありますが、どれも上の写真のように羽や頭部まで白色化しています。
ところが、今回のペンギンは、はっきりと濃い黄色色素が見られるのです。
写真を見たアリゾナ州立大学の生物学者、ケビン・マックグロウ氏は「瞳の色からやはりアルビノと思われるが、サンプルを採取し、遺伝子的レベルで分析しなければ真相は分からない」としています。
アルビノやリューシズムの個体は、野生下で目立ってしまうため、天敵に狙われやすくなります。
黄色ペンギンは今のところ、周囲に天敵があまりおらず、大勢の仲間に囲まれていることから、不都合な点はないようです。