イカの自制心は「狩りのスタイル」から生まれた?
研究主任のアレクサンドラ・シュネル氏は「この結果は、単に無脊椎動物という理由だけでなく、イカが孤立した短寿命の生き物という点で真に驚くべきこと」と指摘します。
霊長類やカラス、オウムが自制心を進化させた理由は、彼らがまさに長寿で、社会的な生き物であるからです。
複数の仲間と長く付き合っていく中では、争いを避けたり、絆を深めたりするために「自分を抑える」ことが必要になります。
ところがイカは、基本的に単独で暮らしており、寿命は3年ともちません。
その中で研究チームは「イカの狩猟スタイルが自制心を進化させたのではないか」と推測します。
イカは、岩場や海藻の中でカモフラージュをしたまま、長い間一か所に隠れ続けます。
そして獲物が現れたら瞬時に捕食し、またカモフラージュをして身を潜めます。
この「ジッと待つ」スタイルにイカがこだわる理由は、もしカモフラージュせずにぶらぶらしていると、彼ら自身が捕食対象となるからです。
ジッと動かずに待ち伏せする、耐え忍ぶ習性が、イカに自制心をもたせたのかもしれません。
シュネル氏は「無脊椎動物に初めて自制心が見つかったことで、生物における知性進化の起源解明に一歩近づいた」と話します。
その一方で、イカが自制心を働かせる行動原理はほぼ理解されておらず、今後も継続的な調査が必要です。
イカは研究されるごとに驚きの能力を露わにしていますが、ほかにどんな秘密を私たちに隠しているのでしょうか。