オスの鳴き声に近い音をピンポイントで消していた
オスのアメリカアマガエルは、配偶者となるメスに自らの存在を知らせるべく、「メイティング・コール(mating call)」という交尾アピール音を発します。
研究主任のノーマン・リー氏は「彼らのメイティング・コールは、単音の連続であり、犬の吠え声とアヒルの鳴き声を掛け合わせたような音」と評します。
こちらがその様子。
一方で、彼らの周りには、他種のオスガエルがわんさかおり、同じ理由で大声を張り上げています。
しかし不思議なことに、アメリカアマガエルのメスは、その喧騒の中でもしっかりと同種の声を聞き分けているのです。
そこでチームは、アメリカアマガエルのメス21匹を対象に、さまざまな周波数の音を聞かせて、雑音にどう対処しているかを調べました。
実験では、鼓膜(目の後ろに直接付いている)に向けてレーザー音を当て、跳ね返ってきた振動を測定することで、鼓膜表面で生じる振動量を割り出しました。
それと並行して、各振動を与えたときの肺の状態(膨らんでいるか、しぼんでいるか)も調べています。
その結果、肺が収縮しているときは振動量も多く、雑音がそのまま発生しているのに対し、肺が膨張しているときは鼓膜の振動が抑制され、騒音が消されていたのです。
また、肺の膨張は、雑音の周波数が830〜2730ヘルツになると生じていました。これはオスのアメリカアマガエルのメイティング・コールの周波数に一致します。
つまり、メスは、オスの鳴き声に近い音をピンポイントで消していたのです。
同チームのマーク・ビー氏は「肺の膨張時にのみ見られることから、肺にノイズキャンセリング型ヘッドホンと同じ機能があると見られる」と指摘します。
ノイズキャンセリングの仕組みは、消したい音と真反対の周波数(逆位相)をつくることで、音を相殺させるというもの。
簡単に言えば、プラスにマイナスを合わせてゼロにしてしまうのです。
ビー氏は「おそらくカエルも肺を膨張させることで逆位相を生成し、騒音を打ち消しているのでしょう」と述べています。
研究チームは今後、世界に約7200種いる他のカエルにも同じ能力があるのかを調べていく予定です。