孵化寸前の卵を発見!親が温めていた証拠か
オヴィラプトルは、白亜紀後期(約8,980万〜7,060万年前)に生息した獣脚類で、過去の発掘調査でも、骨と卵が一緒に化石化した巣がわずかながら見つかっています。
しかしこれらは、産卵直後か卵を守っている間に死んだ可能性が指摘され、必ずしも抱卵習性を証明するものではないとされてきました。
ところが今回の化石は少し様子が違います。
まず、親の骨と卵が非常に密着した状態にあり、その間に堆積物は見られませんでした。

また、20個ある卵の内、少なくとも7個は胚が孵化寸前まで成長しており、椎骨、肋骨、大腿骨など骨格がほぼ完全な状態で見つかっています。
さらに、胚の酸素同位体を分析したところ、孵化前の温度が摂氏30〜38度と推定され、親の体温と一致していました。
研究チームのマット・ラマンナ氏は「親の骨と卵が一緒に化石化した例はありますが、卵から孵化寸前の胚が見つかったことはありません。
いくつかの胚はすでに孵化準備ができていたことから、オヴィラプトルが長い間、抱卵をしていたのは間違いないでしょう」と述べています。

その一方で、すべての卵が同じ発生段階にはありませんでした。
これは卵がそれぞれのタイミングで孵化していたことを示し、現代の鳥類には見られません。
現生鳥類の多くは、卵を産み落としてから抱卵に入り、全部がほぼ同じタイミングで孵化します。
このことからオヴィラプトルは独自の繁殖形態を進化させていたのかもしれません。
ただし、中心部の卵が親の体温を強く受けて、孵化時期が早まっただけの可能性もあり、真相解明にはもっと多くのデータが必要です。

その他の点では、現生鳥類に似た特徴が見つかっています。
例えば、親の骨はオスである可能性が高く、ダチョウのように父親が育児に参加していたことを示唆します。
さらに、化石化した胃の中に小さな石がいくつも見つかっています。
これは歯のない鳥が消化を助けるため、事前に砂つぶや小石を飲み込んで砂嚢(さのう)を作るのと同じ習性です。
もしかしたら、オヴィラプトルにも砂肝があったのかもしれません。