外来種の「ヨーロッパ・ミドリガニ」
外来種の「ヨーロッパ・ミドリガニ」 / Credit: Edwin D. Grosholz , UC Davis
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外来種を根絶すると、逆に「爆発的に増加する」場合があると判明!

2021.03.17 Wednesday

外来種は無理に駆除すべきではないのかもしれません。

カリフォルニア大学デービス校は10日、外来種のヨーロッパ・ミドリガニ(学名:Carcinus maenas)を根絶する実験で、約90%を駆除した後、根絶前の3倍に増加したことを発表しました。

これは、外来種が駆除活動に対して劇的な増加反応を示すことを示した最初の成果となっています。

研究は、3月10日付けで『California Agriculture』に掲載されました。

When ‘eradicated’ species bounce back with a vengeance https://phys.org/news/2021-03-eradicated-species-vengeance.html
Engaging the importance of community scientists in the management of an invasive marine pest http://calag.ucanr.edu/Archive/?article=ca.2021a0006

駆除でもとの3倍に激増!原因は「成体」がいなくなったこと?

研究チームは2009年に、カリフォルニア州マリン郡にあるスティンソン・ビーチにて、ヨーロッパ・ミドリガニの根絶実験を開始しました。

本種は世界の外来生物トップ100にランクインしており、アメリカの貝類産業は年間約2000万ドルの損失を出しています。

作業の末、2013年には、現地のヨーロッパ・ミドリガニの個体数を約12万5000から1万以下にまで減少させることに成功しました。

ところが、翌年の2014年に、個体数は30万匹を超えるほど爆発的に増えていたのです。

これは2013年の約30倍に当たり、根絶前と比べるとほぼ3倍に匹敵します。

本種の原産地(青)、侵入地(緑)、潜在的な侵入地(オレンジ)
本種の原産地(青)、侵入地(緑)、潜在的な侵入地(オレンジ) / Credit: Edwin D. Grosholz , UC Davis
実験場所となったスティムソン・ビーチの「シードリフト・ラグーン」
実験場所となったスティムソン・ビーチの「シードリフト・ラグーン」 / Credit: Edwin D. Grosholz , UC Davis

同チームが監視していた他の4つのエリア(駆除活動はしていない)ではいずれも、そのような集団的爆発は見られていません。

つまり、数の増加は、大気や海水の気候変化ではなく、駆除活動に原因があると予想されます。

そして追跡調査の結果、原因は駆除によって成熟個体がいなくなることにありました。

というのも、エビやカニのような甲殻類には、成体が若い個体を共食いするカニバル習性があり、これによってコロニーの増え過ぎが抑圧されます。

ところが成体を根絶すると、駆除されなかった小さな個体たちが無制限に急成長し、短期間で数が一気に増えてしまうのです。

実験で捕獲されたヨーロッパ・ミドリガニ
実験で捕獲されたヨーロッパ・ミドリガニ / Credit: Edwin D. Grosholz , UC Davis

「科学実験の失敗はしばしば私たちを予期せぬ方向に導いてくれる」と語るのは、研究主任のエドウィン・グロスホルツ氏です。

「この失敗により、外来種への正しいアプローチが見えてきました。私たちは、外来種の完全な根絶ではなく、機能的な根絶(Functional eradication)に取り組むべきです」と話します。

「機能的な根絶」の効果は、同氏も参加したカナダ・アルバータ大学の研究(『Frontiers in Ecology and the Environment』、2020)で証明されています。

具体的には、ゴルディロックス値(Goldilocks level)」を目標として駆除を行うというものです。

ゴルディロックス値とは、外来種の急増を防ぐには十分な成体がおり、逆に、在来種を征服するには数が少なすぎるといったレベルのこと。

現地調査を行うチーム、右端がグロスホルツ氏
現地調査を行うチーム、右端がグロスホルツ氏 / Credit: Edwin D. Grosholz , UC Davis
1日に捕獲されたヨーロッパ・ミドリガニの数(2009〜2018)
1日に捕獲されたヨーロッパ・ミドリガニの数(2009〜2018) / Credit: Edwin D. Grosholz , UC Davis

研究チームは、この方法をスティンソン・ビーチで実践したことで、2017〜18年には安定した数に落ち着いています。

一方で、この傾向は甲殻類に特有のものであって、他の外来種では駆除がどのような反応を起こすのか分かりません。

しかし、外来種もただ闇雲に駆除すればいいというわけではないようです。

【編集注 2020.03.17 11:20】
タイトルに誤解を招く表現があったため、修正して再送しております。

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