北極初の発光魚は「2色の蛍光」を発していた
同博物館の学芸員であるジョン・スパークス氏と、海洋生物学者のデビッド・グルーバー氏の率いる研究チームは、2019年、グリーンランド東部沿岸への調査遠征を実施。
そこで、クサウオ科の深海魚「Liparis gibbus」の幼生を2匹発見し、捕獲に成功しました。
クサウオ科は、太平洋、大西洋から北・南極海など極めて広い範囲に分布し、29属334種が知られています。
生息環境は沿岸の浅瀬から深海までさまざまですが、メインとなる種の大半は、水深1000〜2000メートルの深海に生息します。
今回見つかった「Liparis gibbus」は、水深100〜200メートルの薄暗い水域に生息し、端脚類などの小さな生物を食べて生きています。
そして、実験室に持ち帰った個体をブルーライトの下に置いたところ、目と体表面を中心に、これまで北極のどの生物にも見られなかった形での蛍光が確認されたのです。
下の動画で、蛍光しながら泳ぐ姿が見られます。
蛍光特性をもつ生物としては北極圏で初の例です。
驚くのはそれだけではありません。
蛍光性の海洋生物は、ほとんどの場合、単一の色でしか蛍光色を発しませんが、Liparis gibbusは、赤と緑の蛍光色を発していたのです。
スパークス氏は「1色だけでなく2色で光る例はきわめて珍しい」と述べています。


同氏はまた「今回の発見により、北極や南極の海域に未確認の蛍光を示す生物が存在する可能性が示されました。
今後の調査により、さらに多くの蛍光を示す種が極地で見つかるかもしれない」と続けました。
その一方で、極地の生物が蛍光色をもつ理由についても解明が必要です。
一般に、生物の蛍光は、仲間とのコミュニケーションや獲物の誘引、天敵の注意をそらしたりする目的がありますが、環境の違う極地の海ではまた違った目的があるかもしれません。
記事内容に「蛍光」と「発光」を混同した表現があったため、修正して再送しております。