伝説的な布ダッカ・モスリン
伝説的な布ダッカ・モスリン / Credit:Bengal Muslin
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織り方を誰も知らない「最も価値のある布」ダッカ・モスリン (2/3)

2021.03.22 Monday

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ダッカ・モスリンが伝説である理由

Phuti karpasの綿糸は扱いづらい
Phuti karpasの綿糸は扱いづらい / Credit: Bengal Muslin

ダッカ・モスリンはなぜ姿を消したのでしょうか?

それは、誰もその織り方を知らないからです。

またダッカ・モスリンに使用される綿花は、「Phuti karpas」という名の種であり、現在ではそれがどんな植物だったか正確には誰も知りません。

これは世界の綿花の90%を占める「Gossypium hirsutum」とは全く異なっていたようです。

Phuti karpasは気まぐれで、糸にしようとするとすぐに切れてしまうとのこと。

またGossypium hirsutumの細長い綿糸に比べて、Phuti karpasの綿糸はゴツゴツとしていてほつれやすいとも言われています。

Phuti karpasは工業機械による安価な綿布には不向きですが、ダッカの人々はその歴史の中でPhuti karpasを使いこなす独自技術を発展させました。

ダッカ・モスリンは16の独自工程でつくられる
ダッカ・モスリンは16の独自工程でつくられる / Credit: Bengal Muslin

その16の工程の中には、「地元に生息する人食い魚の独特な歯で綿をきれいに整える」「短い綿繊維を伸ばすのに高い湿度が要求されるため、1日で最も湿度の高い早朝と午後遅くに若い熟練者が作業を行う(高齢者は細い糸が見えないため高い技術で扱えない)」などが含まれていました。

ちなみに、1kgのPhuti karpas綿から、たった8gのダッカ・モスリンしか作れないため、非常に手間と費用の掛かる作業だったと言えます。

またダッカ・モスリンの最大の特徴と言えるのが、糸の数です。

現在作られているモスリン(平織り)の糸の数は40~80本です。ところが、ダッカ・モスリンの糸の数は800~1200本です。現在の綿織物と比べても桁違いに多いのです。

一般的に、糸の数が多ければ多いほど生地は柔らかくなり、良い状態を保ちやすいと言われています。

そのため、糸の数だけでもダッカ・モスリンがいかに高品質の織物だったか分かるでしょう。

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