おうし座からはくちょう座まで、天の川全体画像。
おうし座からはくちょう座まで、天の川全体画像。 / Credit:J-P Metsavainio
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これが本当の天の川の姿か。 作成に12年もかかった「天の川のパノラマ画像」が公開される

2021.03.30 Tuesday

2021.03.26 Friday

「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、 乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」

宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」の冒頭は、そんな問いかけから始まります。

当然、私たちはそれが星の集まりだと知っています。しかし、本当に私たちはその姿を知っているのでしょうか?

フィンランドの天体写真家メッツァヴァイニオ(JP Metsavainio)氏は、12年もの歳月をかけて、天の川全体のパノラマ画像を作成し、自身のブログページで公開しています。

詳細な画像で見る天の川は、単なる星の集まりという想像からは、だいぶかけ離れた姿をしているようです。

Milky Way, 12 years, 1250 hours of exposures and 125 x 22 degrees of sky(AstroAnarchy) https://astroanarchy.blogspot.com/

おうし座からはくちょう座まで 天の川のすべて

撮影された夜空の領域
撮影された夜空の領域 / Credit:J-P Metsavainio

天体写真家メッツァヴァイニオ氏が作成した天の川写真は、夜空のこの領域を映し出しています。

それは1.7ギガピクセルの画像で、容量は11.5メガバイトもあります。

おうし座からはくちょう座まで、天の川全体画像。
おうし座からはくちょう座まで、天の川全体画像。 / Credit:J-P Metsavainio

ここにそのまま表示することはできないので、全体写真をきちんと見たい人は、こちらのリンクから画像を開いてください。

天の川銀河には、約2000億個のがあると推定されていますが、ここにはそのうちの約2000万個の星が映し出されています

鮮やかな色合いで映っているのは、イオン化した元素である星雲です。水素=緑、硫黄=赤、酸素=青で放射されるがマッピングされています。

この画像の作成には実に12年もの時間がかかっているといいます。

なぜ、それほどの時間がかかったのかというと、この画像が1度に撮影されたものではなく、メッツァヴァイニオ氏が2009年から2021年までに撮影した234枚ものさまざまな天体写真をつなぎ合わせたものだからです。

使用された写真の総露出時間は1250時間にもなるそうです。

天の川の詳細写真は、12年かけて撮影された234枚の天体写真のモザイク画だという。
天の川の詳細写真は、12年かけて撮影された234枚の天体写真のモザイク画だという。 / Credit:J-P Metsavainio

彼の写真は基本的に同じワークフロー(同じ露光時間、解像度、被写界深度)で撮影されているため、それぞれの画像をつなげるために特別な調整は必要なかったといいますが、膨大な写真をつなげるのは大変な作業だったでしょう。

彼はPhotoshopでそれぞれの写真の星の位置を合わせ、フレーム間のカラーバランス、光度曲線を一致させ微調整してこのパノラマ画像を作り上げたそうです。

一部の天体は、暗すぎて映らなかったため露光時間を長くとっていて、画像の左端にあるはくちょう座の超新星残骸(SNR)は、約60時間以上の露光時間を使ったとのこと。

この画像は構成の都合で、合成された画像の外側に詳細画像として置かれています。

ここにまとめられたそれぞれ画像も、メッツァヴァイニオ氏は個別の作品としてサイト上に公開しているため、各領域はさらに詳細に見ることもできます。

各領域の詳細な写真は、個別の作品としてサイト上で公開されている。
各領域の詳細な写真は、個別の作品としてサイト上で公開されている。 / Credit:J-P Metsavainio

これだけ星が映っていると、どれがはくちょう座かわからなくなりますが、はくちょう座はこのように画像の中に存在しています。

はくちょう座の位置。
はくちょう座の位置。 / Credit:J-P Metsavainio

ちなみに有名なブラックホール「はくちょう座X-1(Cygnus X-1)」の位置は、丸で囲われた辺りです。

なんとも素晴らしいアーティスティックな宇宙画像。

これが川だと言われたり、 乳の流れたあとだと言われた天の川の姿です。

【編集注 2021.03.30 11:15】
記事内容に一部誤りがあったため、修正して再送しております。

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