RORB遺伝子の欠陥が「逆立ち」の原因か
研究チームは、逆立ちの原因を特定するため、ホッピングのできないソトゥール・ダルフォーのオスと、ホッピングができるニュージーランド・シロウサギのメスを交配させました。
そこから生まれた複数のウサギから、ホッピングのできる個体とできない個体を対象に遺伝子解析を行い、互いに比較。
その結果、ホッピングのできない個体にのみ、「RORB」という遺伝子の変異が見られ、欠陥を起こしていることが特定されました。
同チームの分子遺伝学者レイフ・アンダーソン氏によると、この欠陥は「細胞がタンパク質を作るために使う遺伝情報の誤ったバージョンを作り出してしまう」とのこと。
すると、欠陥のあるウサギの神経細胞では、正常なウサギに比べて、RORBタンパク質が少なくなるのです。
RORBタンパク質は、身体の左右の動きの同調を助ける働きがあり、正常な歩行には不可欠とされています。
例えば、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンによる2017年の研究では、マウスのRORB遺伝子を不活性化させると、ふつうの走行ができなくなり、後ろ足を上げて走るようになったのです。

ソトゥール・ダルフォーもゆっくり歩く場合は問題ないのですが、少しスピードを上げて走ろうとすると逆立ちになってしまいます。
これは本種が何らかの理由で、RORB遺伝子に変異を起こしたことに原因があるでしょう。
同チームのミゲル・カルネイロ氏は「本研究は興味深い結果となりましたが、RORBタンパク質の欠如がどのようにしてウサギに逆立ちをさせるかというメカニズムはまだ分かりません。
この遺伝的欠陥が生体に与える影響の解明は、あらゆる動物の動きを理解する上で重要な役割を果たすでしょう」と述べています。
また、この研究成果は、逆立ち歩きの矯正への応用が期待できますし、逆に、あらゆるウサギを逆立ち歩きにさせてしまうことも可能かもしれません。