復元イメージ
復元イメージ / Credit: Christian Klug; Attribution
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イカを喉に詰まらせて死んだ1億8000万年前の「古代イカ」を発見 獲物の重みで海底に沈んでしまった?!

2021.03.29 Monday

イカを喉に詰まらせて死んだイカが発見されました。

スイス・チューリッヒ大学の研究チームは、ドイツ南部で採取された頁岩板に、約1億8000万年前の古代イカの化石を2匹特定。

それがイカ同士の捕食シーンを捉えたきわめてレアな化石と判明しました。

研究は、3月16日付けで『Swiss Journal of Palaeontology』に掲載されています。

Vampire squid ancestor died in ‘eternal embrace’ with its dinner https://www.livescience.com/jurassic-predator-prey-suffocated.html
Distraction sinking and fossilized coleoid predatory behaviour from the German Early Jurassic https://sjpp.springeropen.com/articles/10.1186/s13358-021-00218-y

獲物の重みで沈んで窒息死した⁈

化石は、アマチュア収集家のディーター・ウェーバー氏が、ドイツ南部・オームデンの採石場で発見したもので、専門家に売却後、同国のシュツットガルト国立自然史博物館に保管されていました。

チューリッヒ大学の古生物研究チームの分析の結果、現代のコウモリダコ(Vampire Squid)の古い祖先である「コウモリダコ目(Vampyromorphida)」が2匹特定されています。

コウモリダコは、別名「吸血イカ」とも呼ばれ、「タコとイカどっちなんだ」という感じですが、正確にはどちらでもありません。

タコとイカが種として分化する前から存在している生物です。

捕食の様子
捕食の様子 / Credit: Klug C. et al. 2021

化石のコウモリダコは、ジュラ紀(約1億9960万〜1億4550万年前)の初期に生きていたもので、大きい方は全長47センチ小さい方は全長16.7センチでした。

化石は、軟部組織の痕跡を驚くほど細かく留めており、大きい個体にあった8本の腕と2本のフィラメントも確認されています。

復元図に描かれているように、古代のコウモリダコは、8本の腕の他に、細長い2本のフィラメントが目の下あたりについており、狩猟に使っていたようです。

ところが、獲物を捕まえるまでは良かったものの、捕食に悪戦苦闘している間に、獲物の重みで海底の方に沈んでしまったと思われます。

研究主任のクリスチャン・クルーグ氏は「この海域は当時、中央ヨーロッパの大部分に広がる海盆であり、海底は酸素濃度がかなり薄かったのです。

そのせいで2匹ともに窒息死してしまったのでしょう」と説明します。

皮肉にも、酸素の少ない場所に沈んだおかげで腐食が防がれ、死体を漁る魚も寄り付かず、質の高い保存が可能となったようです。

小さな個体の方の拡大図
小さな個体の方の拡大図 / Credit: Klug C. et al. 2021

一方で、今日のコウモリダコは、プランクトンやデトリタス(微生物の死骸や排泄物による微生物粒子)を主食にし、大きな獲物は食べません。

しかし、この化石が示すように、古代のコウモリダコは明らかに同種をも食べる捕食者でした。

これは初期のコウモリダコが、現生種のように低酸素領域には適応しておらず、多様な摂食戦略を模索していたことを示します。

コウモリダコがどのタイミングで同種間の捕食をやめ、低酸素域に進出したのか、こうした点が今後の研究課題となるでしょう。

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