捕獲された反水素原子をレーザー冷却する
捕獲された反水素原子をレーザー冷却する / Credit: Chukman So/TRIUMF
physics

速すぎて測定できなかった「反物質」のレーザー冷却にCERNが初めて成功

2021.04.01 Thursday
Antimatter cooled by laser light(nature) https://www.nature.com/articles/d41586-021-00786-6
Laser cooling of antihydrogen atoms https://www.nature.com/articles/s41586-021-03289-6

反物質というとなんだかSFの中だけに登場するよくわからないものというイメージがありますが、粒子加速器を使って生成することに成功しています。

ただ、粒子加速器で生成された反物質はとてつもない速度で移動してすぐに崩壊してしまうため、作れはするけどほとんど調べることができませんでした

この問題について、今回CERNのALPHAコラボレーションという研究プロジェクトグループは、レーザー冷却による反水素原子の減速に成功したと報告しています。

この成果によって、今後は謎に包まれていた反物質のさまざまな性質が明らかになるかもしれません。

この研究は、3月31日付けで科学雑誌『nature』に掲載されています。

反物質とはなんなのか?

今回の研究の重要な点は、反物質を測定するために重要な技術が実現されたというところです。

そのため、反物質とはなんなのか? なんで測定する必要があるのか? を知らないとなんの意味があるのかよくわかりません。

まずはそこから説明して行きましょう。もう知っているよという人はこのページは読み飛ばしてください。

この宇宙は無から生まれたと言われますが、世界は基本的には何もない真空でできています。

しかし、その真空はたまに崩れて有が生じてくるのです。

よくある例えでは、真空はきれいにパズルのピースがハマった板面だと言われます。

ここから、何かの衝撃でパズルのピースが1つポロッと落っこちると、そこにはピースと、ピースの抜けた穴が残ります。

真空をパズルに例えると、抜け落ちたピースが物質で残った穴を反物質と言うことができる。
真空をパズルに例えると、抜け落ちたピースが物質で残った穴を反物質と言うことができる。 / Credit:canva

このとき、落ちたビースが物質で、残ったパズルの穴が反物質と例えることができるのです。

パズルの穴にピースを戻せばもとに戻るように、物質と反物質は出会うと両者はこの世から消滅して無に戻ってしまいます。これを対消滅といいます。

私たちのこの宇宙は、そんな風にして、真空から抜け落ちてきた物質が集まって作られているわけです。

そして物質と反物質は完全に対称的な存在で、性質が反転している以外違いはないと考えられてきました。

しかし、そう考えるとある疑問が浮かんできます。

ならどうして、この世界は物質は満ちているのに、反物質と呼ばれるものはまったく見かけないのでしょう? どうして宇宙は反物質でなく物質で構成されることになったのでしょう?

考えられる可能性は1つで、それは物質と反物質が実は完全に対称ではないからです。

反物質のほうが物質より寿命が短い場合、世界からは徐々に反物質が消えて物質だけが残っていくことになります。

こうした話は専門的な言葉で「CP対称性の破れ」などと呼ばれます。

理論的にはこうした可能性はいろいろと指摘されてきました。

しかし、物理学は実際に実験で調べて目で確認するまでは事実とは信じない学問です。

そのため、反物質が本当に物質とは対称性を持たないのか? 持たないとしたらどういった性質が異なっているのか? 実際測定して調べなければなりません。

このために反物質を測定する研究というものが必要になって来るのです。

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