赤ちゃん同士の共食いは初確認!
研究チームは当初、フォーブズ・ヒトデの幼生が捕食者のカニにどのような反応を示すかの実験をしていました。
「ところが、カニを水槽に入れる前に、ヒトデの赤ちゃん同士が互いを食べ始めたのです」と研究主任のジョン・アレン氏は話します。
この現象は前例がなかったため、チームは急遽、実験内容を変更することにしました。
フォーブズ・ヒトデはアメリカ東海岸でよく見られ、成熟すると約12〜24センチに達します。

本種は「変態(メタモルフォーゼ)」と呼ばれる成長プロセスを踏み、毛虫がチョウに変身するように幼生〜成体へと変わっていきます。
生まれたばかりのヒトデは非常に小さく、約1ヶ月間、海中を漂いながら過ごします。
そこから変態して若いヒトデになり、海底に定着。成長をつづけながら、次第に大人へと成熟していきます。
チームは観察の中で、幼生のヒトデが変態後4日目から共食い行動を始めることを発見しました。
以前の調査ですでに、海底に沈み始めの幼生が、先に定着していた大きな個体のエサになることは知られていましたが、幼生同士が食べ合う例は今回が初めてです。
また、幼生のサイズはほぼ同じですが、やや大きい個体が小さい個体を食べていました。

本種のメスは、年間に約500万~1000万個の卵を産みます。
アレン氏は「これだけ産卵数が多いと、同種間の生存競争は避けられません。進化の観点から見ると、兄妹同士の共食いは個々のヒトデに適応上の優位性を与える可能性があるでしょう」と指摘します。
生物界のカニバリズムは、ヒトを含めて1300種以上が知られており、特にめずらしい行動ではありません。
アレン氏は「幼生段階の共食い行動は、予想以上に広く自然界に広まっているかもしれない」と話しています。