縫合線は「浮力の微調整」に役立っていた?
残念ながら、生きているアンモナイトは存在しないため、研究チームは3Dプリンターで貝殻の模型を作成しました。
精巧な構造だけでなく、より本物に近づけるため、殻表面に水が付着するの助ける酸化セルロースのコーティングを施しています。
これはアンモナイトの子孫であるオウムガイにも見られるものです。
模型はサイズや縫合線の複雑さを変えて、複数用意しました。
模型とは違い、実験方法はいたってシンプルです。
まず、乾いた状態でそれぞれの模型の重さを測り、次に水に浸して貝殻に水を吸い込ませ、最後に、取り出した貝殻の水を排出して、再び重さを測ります。
こうして最終的に保持された水の量を割り出します。
結果はチームの予想通り、縫合線の複雑なものほど、より多くの水が取り込まれており、縫合線の複雑さが水の保持に有効であることが示されました。
研究主任のデイビッド・ピーターマン氏は「縫合線の複雑化により、貝殻表面の界面張力が変化して、多くの水を取り込めるようになったと考えられる。
アンモナイトは水の保持能力を高めることで浮力の微調整を可能にし、同時に、一生を通して変わる体重変化にも対応したと見られる」と説明します。
この他にも、遊泳のスピードやバランス力を高めるなど、縫合線にはさまざまな機能があると予想されています。
チームはその解明も含め、調査を進める予定です。