連星ブラックホールが重なったとき、光は複雑に歪曲する。
連星ブラックホールが重なったとき、光は複雑に歪曲する。 / Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell
physics

2つのブラックホールが重なったとき地球からどう見える? 複雑に光が歪んだ映像をNASAが公開

2021.04.19 Monday

New NASA Visualization Probes the Light-bending Dance of Binary Black Holes(NASA) https://www.nasa.gov/feature/goddard/2021/new-nasa-visualization-probes-the-light-bending-dance-of-binary-black-holes

ブラックホールの史上初の撮影が達成されて以降、ブラックホールが実際どう見えるのかという理解はだいぶ進んできました。

ここでNASAの研究チームが新たに挑戦したのが、連星ブラックホールはどう見えるのか? という問題です。

強力な重力を持つ2つのブラックホールが、地球の視線上で重なったとき、その姿は複雑に歪曲した形に見えるでしょう。

この複雑なシミュレーションをNASAの研究者は実現させて、現在動画で公開しています。

ブラックホールの見え方

ブラックホールはどの様に見えるのか?

これは1978年、フランスの天体物理学者ジャン=ピエール・ルミネが長年の観測と分析に基づいて作成した、手書きの予想図までさかのぼります。

このルミネが手書きで描いたブラックホールのシミュレーションは、最近になって初めて撮影されたブラックホールの姿とほぼ一致していました

彼の予想は非常に正確だったのです。

40年前の手書きブラックホール予想図が、NASA最新のシミュレーション映像と見事に一致

ブラックホールは光さえ吸い込んで逃さないため、本体は真っ黒で何も見えませんが、その周辺では吸い寄せた物質が作り出す「降着円盤」が、激しい摩擦によって光り輝いています。

その輝きは、ブラックホールの強力な重力場によって歪んで見えるのです。

この詳細な解説に興味のある人は、過去の記事を参照してもらうとして、ではブラックホールが連星だった場合、それはどの様に見えるのでしょうか?

太陽の数億倍という巨大なブラックホールのペアが地球の視線上で重なったとき、それは複雑な光の歪曲を起こすはずです。

NASAのゴダード宇宙飛行センターの天体物理学者ジェレミー・シュニットマン氏は、それぞれの降着円盤を数百万年以上維持できる連星ブラックホールについて、その見え方をスーパーコンピューターを使ってシミュレーションしてみました。

2つの超大質量ブラックホール。赤は太陽の2億倍、青はその半分の質量のブラックホールを表している。
2つの超大質量ブラックホール。赤は太陽の2億倍、青はその半分の質量のブラックホールを表している。 / Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell

このシミュレーションでは、連星ブラックホールはそれぞれの降着円盤の光を見分けられるよう、それぞれ赤と青に色分けして表示しています。

赤は太陽の2億倍、青はその半分の1億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールです。

ちなみに、実際のブラックホールの光はほとんどが紫外線以上の波長を持つため、肉眼で見ることは困難です。

この視覚化では、「相対論的収差」という現象を示しています。

相対論的収差とはブラックホールが見る人に近づくと小さく見え、離れると大きく見えるというものです。

この効果は、通常の連星系を上から見た場合には消失するのですが、連星ブラックホールでは上から見たときにも、奇妙な現象が確認できます。

このときそれぞれの降着円盤の中に、お互いの小さな姿が生成されるのです。

連星系を上から見ると、降着円盤の中に片方の小さな姿が映っている。
連星系を上から見ると、降着円盤の中に片方の小さな姿が映っている。 / Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell

これはよく見ると、片方のブラックホールの側面の光が90度曲がって、私たちに見えているのがわかります。

つまり、連星ブラックホールを上から見た場合、私たちはブラックホールの上部と側面を同時に観測することができるのです。

こうしてシュニットマンは、降着円盤がブラックホールの周りの歪んだ時空を通り抜けるときの経路を計算して、その姿の視覚化を行いました。

しかし、これは非常に複雑な計算で、最新のデスクトップコンピュータを使用して計算しても、動画作成に約10年掛かります。

そこで、シュニットマンは、同僚のブライアン・パウエル氏の協力の下、NASA気候シミュレーションセンター(NCCS)のスーパーコンピューター「Discover」を使って、この計算を実行しました。

「Discover」の持つ12万9千個のプロセッサの2%を使用すれば、この計算は約1日で終わります。

こうしてシミュレーションされた連星ブラックホールの重なる瞬間がこれです。

連星ブラックホールの重なる瞬間の見え方。
連星ブラックホールの重なる瞬間の見え方。 / Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell

これは背後にある赤い大きなブラックホールの降着円盤が、非常に複雑に歪んで見える様子を示しています。

ブラックホールの重力レンズ効果を使って、遠くの銀河を観測することもありますが、その場合の光は、この超大質量ブラックホールの連星ほど複雑に曲がりくねったりはしません。

超大質量ブラックホールの連星は稀な存在のため、今回の条件によく似た連星ブラックホールを見つけ出し、直接観測することはかなり難しいでしょう。

しかし、こうしたシミュレーションの結果は、2つの非常に重い超大質量ブラックホールの物理を理解するために役立ちます。

現在の観測技術の進歩を考えると、こうした現象を人類が目にする日は、そんなに遠くないかもしれません。

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