新たな研究によると自分の顔を脳が優先的に認識するのはドーパミン系が働くためだという。
新たな研究によると自分の顔を脳が優先的に認識するのはドーパミン系が働くためだという。 / Credit:canva
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無意識下でも「自分の顔を見るとやる気がでる」脳の仕組みを発見

2021.05.03 Monday

人はなぜ自分の顔を自動的に素早く認識することができるのでしょうか?

大阪大学の研究チームは、この謎を解明するため調査を行い、自分の顔がサブリミナル表示されただけでも脳のドーパミン報酬系が活動していることを発見しました。

人はたとえ意識に上らなかったとしても、潜在意識に自分の顔が入っただけでドーパミンを放出し、素早く反応できるようになっているようです。

この研究は、英国科学誌『Cerebral Cortex』に4月16日付けで掲載されています。

自分の顔を優先処理する脳の仕組みを発見(ResOU) https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210416_1
Self-Face Activates the Dopamine Reward Pathway without Awareness https://academic.oup.com/cercor/advance-article/doi/10.1093/cercor/bhab096/6227018

なぜ人は自分の顔に反応できるのか?

人は自分の顔に対して自動的に注意を向けることができ、他人の顔よりも素早く正確に反応することが知られています。

こうした現象は、自己顔の優位効果と呼ばれています。

大勢の写った写真の中から、自分の顔を素早く見つけ出せるのはこうした現象のわかりやすい一例です。

また興味深いことに、この自己顔の優位効果は、意識に上らないようなサブリミナルで自分の顔が表示された場合にも観察されます

サブリミナルとは、情報量の多い動画などの合間に、認識できないような短時間だけ画像を表示することをいいます。

このとき、意識することはできずとも、潜在意識に情報が入ることで、何らかの効果が起きる場合があります。

自分の顔というものは、こうした潜在意識レベルでもがなんらかの処理を行っている可能性があるのです。

しかし、なぜ人が素早く自分の顔に反応できるのか? という自己顔の優位効果が生まれる脳の仕組みついてはわかっていませんでした。

そこで、今回の研究チームは、自分の顔と他者の顔をサブリミナル表示させとき、脳がどのように活動しているかfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って調査しました

サブリミナルの顔表示(上)、自分の顔に反応したときの脳活動(下)
サブリミナルの顔表示(上)、自分の顔に反応したときの脳活動(下) / Credit:Chisa Ota and Tamami Nakano,Cerebral Cortex(2020),ResOU

すると、被験者は自分の顔が表示されたことに気づいていないにも関わらず、自分の顔に対して、脳深部にある腹側被蓋野という領域が活性化したのです。

この領域は、ドーパミンを放出して、やる気を引き出す報酬系の中枢とされています。

対して、他人の顔が表示された場合、なじみのない情報に応答する、脳の扁桃体が活性化していました。

つまり、ドーパミン報酬系が働くことで、人は自分の顔に対して自動的に注意が向き、反応が促進されて、自己顔の優位効果が生じていると考えられるのです。

次ページ目を大きくする美容フィルターは、自己認識を妨げるのか?

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