発見されたブラックホールは、記録上もっとも地球に近く、もっとも小さい。
発見されたブラックホールは、記録上もっとも地球に近く、もっとも小さい。 / Credit:Ohio State motion graphic by Matt Stoessner
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「もっとも小さく、もっとも地球に近いブラックホール」が見つかった?

2021.04.22 Thursday

これまで発見されてきた恒星質量ブラックホール(もっとも小さいクラス)は、全て太陽質量の5倍以上でした。

しかし、オハイオ州立大学の研究チームは、地球から約1500光年という位置に、太陽質量の約3倍程度のブラックホールを発見した可能性があると報告しています。

「ユニコーン」と名付けられたこの天体は記録上、もっとも地球に近く、もっとも軽いブラックホールとなる可能性があります。

この研究は、科学雑誌『王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)』へ掲載される予定です。

Black hole is closest to Earth, among the smallest ever discovered(Ohio State News) https://news.osu.edu/black-hole-is-closest-to-earth-among-the-smallest-ever-discovered/

もっとも軽いブラックホール「ユニコーン」

一言でブラックホールと言っても、それは質量に応じていくつかのクラスに分類されます。

もっとも小さいクラスは恒星質量ブラックホールと呼ばれるもので、これは太陽質量の数十倍程度までのものです。

これまで発見されてきた恒星質量ブラックホールは、どれも太陽質量の5倍以上であり、これより小さいものは見つかっていません。

太陽質量の5倍以下のブラックホールは見つかっていない。
太陽質量の5倍以下のブラックホールは見つかっていない。 / Credit:Ohio State motion graphic by Matt Stoessner

しかし、最近報告されている研究では、5倍よりもっと小さなブラックホールが存在するはずだと指摘されています。

こうしたあるはずだけれど見つからない領域を「質量ギャップ」と呼びます

天文学者たちは、そんな質量ギャップに収まる小さなブラックホールの探索に興味を向けていました。

ただ、ブラックホールは定義上、視覚的にも、その他の天文学者が測定する電磁波の波長においてもとても暗い天体です。

太陽質量の数百万倍という超大質量ブラックホールの場合は、降着円盤が存在するため観測が可能ですが、非常に小さいブラックホールは、それを単独で検出することはほぼ不可能に近いのです。

しかし今回、オハイオ州立大学の研究チームは、その候補となる天体を発見することに成功したのです

それはいっかくじゅう座の方角にある赤色巨星でした。この星は、これまでにも多くのデータが収集されています。

研究チームがこの星のデータを分析したところ、星からのの強さや見え方が、軌道上のさまざまな場所で変化していることに気が付きました

チームはこれが、何かが赤色巨星を引っ張って、星の形を変化させているためだと考えましたが、その存在は見えませんでした。

ブラックホールの潮汐力が赤色巨星を歪めているように見えた。
ブラックホールの潮汐力が赤色巨星を歪めているように見えた。 / Credit:Ohio State illustration by Lauren Fanfer

見えない何かが赤色巨星を潮汐力によって変形させているならば、その候補はブラックホールです。

しかし、その影響を見るに、ブラックホールの質量は非常に小さくなければならず、太陽質量の5倍未満である可能性があったのです。

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