発見されたブラックホールは、記録上もっとも地球に近く、もっとも小さい。
発見されたブラックホールは、記録上もっとも地球に近く、もっとも小さい。 / Credit:Ohio State motion graphic by Matt Stoessner
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「もっとも小さく、もっとも地球に近いブラックホール」が見つかった? (2/2)

2021.04.22 Thursday

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最小ブラックホールの潮汐力で歪む赤色巨星

多くの人は、これがブラックホールである可能性を否定する理由を考えようとしました。

しかし、今回の研究の主執筆者であるオハイオ州立大学のタリンドゥ・ジャヤシンゲ氏は、これがブラックホールである可能性があるとしたらどうだろうか? と言ったのです。

もし連星の片方が先に死んでしまい、それがブラックホール化した場合、星とブラックホールの連星が誕生します。

連星の場合、伴星を観測することで、ブラックホールの存在を知ることができます

今回の赤色巨星は、まだこれがブラックホールとの連星であるという可能性を考慮して分析されたことはありませんでした。

研究チームの1人、オハイオ州立大学天文学科の学科長であるトッド・トンプソン氏は、今回観測された状況を次のように説明しています。

「月の重力が地球の海を歪ませ、海が月に向かって膨らむことで潮の満ち引きが生じるように、ブラックホールが星を歪ませて、一方の軸が他方の軸よりも長いフットボールのような形にしているのです」

たしかにこの赤色巨星のの見え方が変化するもっとも単純な説明は、それがブラックホールによるものだということでした

そして、この場合、もっとも単純な説明が、もっとも可能性の高いものでした。

赤色巨星はブラックホールの潮汐力で歪んでいるように見えた
赤色巨星はブラックホールの潮汐力で歪んでいるように見えた / Credit:Ohio State motion graphic by Matt Stoessner

チームは赤色巨星の速度、軌道の周期、潮汐力による赤色巨星の歪み方から、もしブラックホールが存在する場合、その質量は太陽の3倍に相当すると結論づけました

これはまさに質量ギャップを埋めるブラックホールの発見です。

この10年ほど、天文学者や宇宙物理学者たちは、非常に小さいブラックホールが見つからないのは、使っている装置やアプローチ方法が十分ではないか、もしくは単にそんなブラックホールが存在しないからだと考えていました。

しかし近年、より小さなブラックホールを探すための大規模な実験が開始されており、トンプソン氏は、「将来的に「質量ギャップ」に属するブラックホールがより多く発見されるだろう」と述べています。

「なぜなら、ブラックホールを発見するたびに、新しいブラックホールを知る手がかりが増えていくからです」

まだ、今回の発見が最小のブラックホールであると確定したわけではありません。しかし、その可能性はだいぶ高いようです。

この発見はギャップを埋める天体が、今後どんどん見つかっていくきっかけになるのかもしれません。

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