最悪は「眼球の摘出」が必要になる
ムコール症の原因である「ムコール菌」は、土や植物、肥料、空気、人の鼻腔や粘液など、いたるところに存在する真菌です。
空気中や皮膚の傷口から侵入したムコール菌は、血の流れに乗って、目や心臓、脳にまで広がります。
特に、糖尿病やHIV、エイズ、がん患者といった、免疫力の低下している人が感染および重症化しやすく、最悪は死に至ります。
インドでは、ここ数週間のムコール症患者が急増しており、コロナ対策局の医師は「パンデミック前の4〜5倍に膨れ上がっている」と言います。
同国西部のグジャラート州だけで、すでに300人以上がムコール症に感染し、その多くが糖尿病を患うCOVID-19の回復者でした。
ムコール症は、発熱、鼻や口蓋の壊死性病変、眼球の突出、視力の低下などの症状を起こします。
今回のインドでは、発見や対処が遅れ、視力を失っている患者も多く、感染が脳にまで侵襲しないよう眼球の摘出手術も行われました。
報告によると、すでに11人の患者が摘出手術を受けています。
専門家は、ムコール症の増加について、「COVID-19の重症化患者への救命措置に使われるステロイドが原因ではないか」と考えています。
ステロイドは、コロナ重症化の主因である「サイトカインストーム(免疫系が暴走して体にダメージを与えること)」を抑制する治療薬です。
しかし一方で、患者の免疫力を過剰に低下させて、血糖値を上昇させる作用があるため、ムコール症に感染しやすくなっていると思われます。
インドでは現在、1日あたり30万人以上の新規コロナ感染者が出ており、累計では2290万人を超えています(日本は約65万人)。
ムコール症への対処が遅れれば、さらなる災厄を生むかもしれません。