天才作曲家ベートーヴェンは、20代ですでに聴力をほとんど失っていた
天才作曲家ベートーヴェンは、20代ですでに聴力をほとんど失っていた / Credit:canva
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骨伝導は「ろう者ベートーヴェンの執念」から実用化された (2/3)

2021.09.04 Saturday

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骨伝導を発見したベートーヴェン

通常、音は空気の振動として伝わり、私たちの鼓膜がその振動を感じ取って内耳(聴覚神経)へと伝えていきます。

しかし、音を聞く方法にはもう1つあり、空気の振動以外に、体内の骨の振動も直接内耳へと音を伝えます。これが骨伝導です。

初めて自分の録音した声を聞いた人は、たいてい変な声だなと違和感を覚えます。

これは自身の発する声が、空気の振動と、体内の骨伝導を合わせた音として聞いているためです。

録音では骨伝導の音を感じないため、普段の自分の声と違って聞こえるわけです。

耳を塞いで喋っても自分の声がちゃんと聞こえるのも、骨伝導で自分の声を聞いているためです。

ベートーヴェンの難聴は、現代では耳硬化症だったのではないかといわれています。

耳硬化症は耳の深部にある「アブミ骨」という部分が硬化して動きが悪くなり、鼓膜の振動が内耳に伝わりにくくなる病気です。

耳硬化症は内耳のアブミ骨の硬化で鼓膜の振動が伝わりづらくなる病気
耳硬化症は内耳のアブミ骨の硬化で鼓膜の振動が伝わりづらくなる病気 / Credit:河野耳鼻咽喉科

耳硬化症による難聴では、鼓膜を介さない骨伝導なら音を聞くことができます。

そしてあるとき、ベートーヴェンは自らその事実に気づいていたのです。

骨伝導の存在は、ベートーヴェン以前の時代にもその存在を発見して研究を行った学者がいました。

ただ、18世紀ではまだ聴覚の原理についてはほとんど理解されていなかったため、彼がこうした研究を知っていたかどうかは定かではありません。

ともかくベートーヴェンは、木の棒の一端をピアノに置き、もう一方を歯で噛みしめることでピアノの音を聞くという方法を思いついたのです。

ベートヴェンは加えた木の棒を利用して骨伝導でピアノを演奏していた
ベートヴェンは加えた木の棒を利用して骨伝導でピアノを演奏していた / Credit:zmescience

これはある種の発明であったといって良いでしょう。

こうした原理は現代でも利用されていて、骨伝導式の補聴器は、銃声などの騒音の中でも通信を聞ける装置として兵士が利用したりしています。

また、ダイバーが水中で話したり聞いたりする際にも、骨伝導の補聴器やマイクが利用されています。

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