重水が細胞活動を遅延させる
重水が細胞活動を遅延させる / Credit:Leipzig University
science

細胞の時間を遅らせる方法がみつかる、重水に浸すだけ

2021.06.07 Monday

新しい発見によると、相対性理論に頼らなくても「時間を遅らせる」ことができるかもしれません。

ドイツ・ライプツィヒ大学(Leipzig University)のピーターデバイ軟質物質物理研究所(Peter Debye Institute for Soft Matter Physics)に所属するヨルク・シュナウス氏ら研究チームは、重水に浸して細胞の時間を遅延させることに成功しました。

チームによると、冷凍保存のように温度を変える必要はありません。

研究の詳細は、6月3日付の科学誌『Advanced Materials』に掲載されました。

How to retard time for cells https://phys.org/news/2021-06-retard-cells.html
Cells in Slow Motion: Apparent Undercooling Increases Glassy Behavior at Physiological Temperatures https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.202101840

水とは性質の異なる「重水」に浸す

重水素は水素に比べて中性子が1つ多い
重水素は水素に比べて中性子が1つ多い / Credit: canva, ナゾロジー編集部

重水(D2O)は水(H2O)と同じように水素と酸素からできていますが、水素の原子核に若干の違いがあります。

普通の水素が陽子1個なのに対し、重水素(Dまたは2H)の原子核には中性子が1個多く含まれているのです。

そのため重水素は普通の水素より重く、重水と水では性質も異なっています。

例えば、重水には「水より中性子を吸収しにくい」という性質があり、核燃料の有効活用に役立ちます。

そのため原子力発電に利用されてきました。

また最近では「重水が人間にとって甘い」ことも研究で示されています。

そして今回チームが着目したのは、「重水が細胞に与える影響」です。

新しい研究では、重水に細胞を浸けるだけで、細胞の時間を大幅に遅らせることができました。

重水の中では、細胞活動がスローモーションになっていたのです。

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