水量は現存する全湖の10倍以上
パラテチス海は、世界地図で表すと、イタリア上部のアルプス山脈〜中央アジアのカザフスタンまで広がっていました。
その大きさは、280万平方km以上とされており、地中海の面積を凌ぎます。
また、今日最大の湖であるカスピ海が約37万4000平方kmであることを踏まえると、その大きさが分かるでしょう。
さらに、パラテチス海の最盛期には177万立方kmを超える水が存在したと推定されており、これは現存するすべての湖を合わせた水量の10倍以上に相当します。
研究チームは、パラテチス海の移り変わりを調べるため、既知の地質学的記録や化石記録を総合し、分析しました。
その結果、湖は誕生から消滅までの約500万年の間に、気候変動が原因で4回ほど劇的に縮小していたことが分かったのです。
790万〜765万年前には水位が250mも低下し、最大縮小時には、3分の1の水量と3分の2以上の表面積が失われていました。
それにより、パラテチス海の西部(今日の黒海あたり)の塩分濃度が、海水の3分の1から同等のレベルまで急上昇したと考えられています。
この変化が原因となって、湖にいた藻類や微生物、その他、多くの水棲生物が絶滅しました。
その一方で、縮小した湖に適応した生物たちもいたようです。