ウンチの中に新種の古代甲虫を発見!
このフンの化石は、数年前にポーランド南西部にあるクラシェユフ村で発掘されました。
フンの化石は一般に「コプロライト(coprolite、糞石)」と呼ばれ、古生物学上の貴重な試料となっています。
古代の虫は木の樹脂のかたまりである琥珀中によく保存されますが、その年代は最も古くて1億4000万年前です。
一方で、コプロライトはそれよりはるか昔の生態系を保存している点で大いに注目されています。
実際に、今回見つかったコプロライトは、約2億5000万〜2億130万年前までつづいた三畳紀(Triassic period)のものでした。
研究チームの昆虫学者、マルティン・フィカチェク氏(台湾・国立中山大学)は「三畳紀の甲虫がどんな姿をしていたかはほぼ知られていませんでしたが、今回それを知るチャンスがついに訪れました」と話します。
チームは、フランス・グルノーブルにある「欧州シンクロトロン放射光施設(ESRF)」の高性能マイクロトモグラフィーを用いて、コプロライトをスキャニング。
高い解像度と鮮明なコントラストで、フンの中の甲虫を3次元的に可視化することに成功しました(上の動画を参照)。
研究主任のマルティン・クバーンストロム氏(スウェーデン・ウプサラ大学)は「甲虫の保存状態の良さにとても驚きました。
保存プロセスは主に、コプロライト中のリン酸カルシウム組成によって促進されます。これに加えて、バクテリアによる初期の鉱物化が、この繊細な化石の保存に役立ったのでしょう」と説明します。
分析の結果、この甲虫は科学的にまだ知られていない新種であることがわかりました。
チームは、本種が三畳紀に生息したこと、現存する代表的な甲虫目の「ツブミズムシ亜目(Myxophaga)」に属すること、およびコプロライトに保存されていたことから、学名を「トリアミクサ・コプロリチカ(Triamyxa coprolithica)」と命名しています。
本種は、半水生または湿度の高い環境に生息していた可能性が高いとのことです。
また、フンの排出主は、本種と同時代のポーランドに生息していた恐竜の直近の祖先である「シレサウルス・オポレンシス(Silesaurus opolensis)」と判明しています。
シレサウルスは、全長2メートル、体重15キロほどで、二足歩行に適応し、身軽な体型をしていました。
クバーンストロム氏は「シレサウルスは雑食性で、食料の一部として甲虫を食べていたと見られる」と話します。
チームは今回の結果を受けて、これまで以上にコプロライトの調査に注力していきたいと考えています。
フィカチェク氏は「より多くのコプロライトを分析すれば、あまり役に立たないフンを排出する生物や、昆虫をよく食べている生物が分類できます。
それをもとに、古代の生態系や食物連鎖が時代とともにどう変化したかを調べられるでしょう」と述べました。