単なる細胞塊を胚を模倣した何かに変換することに成功
単なる細胞塊を胚を模倣した何かに変換することに成功 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
biology

幹細胞から「脳や心臓をもつ擬似的な胚」を作ることに成功

2021.07.02 Friday

人工的に「命」のようなものが造られました。

6月2日にバージニア大学の研究者たちにより『Nature Comminications』に掲載された論文によれば、幹細胞の塊に前後を教えることで、脳の一部や鼓動する心臓を含む、複数の臓器を持った疑似的な胚(胚様体)を作成することに成功したとのこと。

また形成された臓器や働いている遺伝子を調べた結果、胚様体が妊娠中期にあたることが判明しました。

このような高度な胚の模倣が哺乳類で行われたのは、世界ではじめてです。

「命」を造る技術の最前線では、いったいどんな研究が行われているのでしょうか?

In a Dish, a Mouse, Crafted From Stem Cells, Begins to Form https://newsroom.uvahealth.com/2021/06/28/in-a-dish-a-mouse-crafted-from-stem-cells-begins-to-form/
Construction of a mammalian embryo model from stem cells organized by a morphogen signalling centre https://www.nature.com/articles/s41467-021-23653-4

細胞塊を直接、胚にする

受精卵を使わず幹細胞から直接、胚や胎児を造る研究が世界各地で盛んに行われている
受精卵を使わず幹細胞から直接、胚や胎児を造る研究が世界各地で盛んに行われている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

近年、精子・卵子・受精卵などを使用せずに、幹細胞から直接、胚や胎児を造る試みが活発に行われるようになってきました。

幹細胞は心臓や・骨・消化管など様々な部位に変化する万能性を持ちます。

現在、研究者たちの多くは、この万能性を追求すれば、ただの細胞塊を胚や胎児に変えることが可能だと考えています。

しかし数多くの試みにもかかわらず、ヒトやマウスの胚を完全に模倣するには至っていません。

最も成功した「ガストロイド」と呼ばれる疑似胚(ヒトおよびマウスのもの)は、遺伝的には胎児の段階まで達したものの、頭部の構造が不完全であり、限定的な模倣に留まっていました。

万能細胞から擬似的なヒト胚を造ることに成功! 命の宿っていない”初期胎児”を再現できる

今回、バージニア大学の研究者たちは、細胞塊の変化を妨げている原因が、体の前後を決める情報が不完全なせいだと仮定します。

方向性のない幹細胞の塊を頭と尻尾のある「胚」にするには、塊に前後の軸を教える必要がある、とする考えです。

そこで研究者たちは、マウスの幹細胞塊に対して従来のアプローチに加えて、体の前後軸を決める因子(WNT・NODALに加えてモルフォゲンシグナル)を操作してみることにします。

すると、衝撃的な結果が得られました。

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