謎の海流に押し流されていた
コシオレガニ(学名:Pleuroncodes planipes)は、太平洋東部、メキシコ西の大陸棚に分布する赤ガニです。
体長は3センチから、大きくて13センチほど。上半身はエビに似ていますが、下半身はエビよりずっと短いです。
通常は、メキシコ最北に位置するバハ・カリフォルニア州の沖合にいますが、海水が温暖な年には生息範囲がカリフォルニアの北方まで伸びることがあります。
また、コシオレガニは人をほとんど恐がらず、水中ではダイバーにも平然とすり寄ってくるそう。
とても愛らしい生き物です。
では、そんなコシオレガニが大量に座礁するのはなぜでしょうか?
いくら人懐こいからといって、命を賭してまで人に会いに来ることはないはずです。
そこで研究チームは、数か月にわたり、コシオレガニの生息域のデータを収集。最終的に、1950年〜2019年までのコシオレガニの生息域と座礁の状況を明確に把握することができました。
このデータを例年ごとの海水温や海流の動きと照らし合わせた結果、コシオレガニの北上は、バハ・カリフォルニアから中央カリフォルニアに流れ込むイレギュラーな海流に関係していることが分かったのです。
以前から指摘されていた「エルニーニョ現象(太平洋赤道域の海水温が例年より高くなる現象)」との関連性も見られましたが、それよりもメキシコ西沖で発生する不規則な海流の方が強く影響していました。
こちらは、2015年にカリフォルニアの海辺に座礁したコシオレガニの様子。
研究主任のミーガン・チミノ氏は「これまでの仮説では海水面の温度が原因とされていましたが、本調査から、コシオレガニは海流に押し流されていることが新たに示された」と述べています。
コシオレガニは北方の冷たい水が苦手なため、カリフォルニアに漂着した個体は多くが命を落とします。
冷たい海水から脱出するために、浜辺に上がって来ているのかもしれません。
研究チームは今後、このイレギュラーな海流がメキシコ西沖でいかに生じるのかという発生メカニズムを解明していく予定です。