腸内細菌(うんち)の移植はコロナ治療に効果があるのか
腸内細菌(うんち)の移植はコロナ治療に効果があるのか / Credit:Depositphotos
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他人の「うんち移植」で新型コロナの早期治療が望めるという研究

2021.07.10 Saturday

現在、世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン接種が始まっています。

そんな中、一部の科学者たちは感染後の治療法として「うんち移植」に注目しています。

ポーランド・ワルシャワ医科大学(Medical University of Warsaw)に所属するヤロスワ・ビリンスキ氏ら研究チームは、新型コロナウイルスに感染した2人の患者が、「便微生物移植」によって早期回復したかもしれないと報告しました。

報告の詳細は、7月6日付の学術誌『Gut』に掲載されています。

Poop Transplants Have Been Linked to Improved COVID-19 in Two Patients in Poland https://www.sciencealert.com/two-people-in-poland-had-poo-transplants-and-somehow-their-covid-symptoms-got-better
Rapid resolution of COVID-19 after faecal microbiota transplantation https://gut.bmj.com/content/early/2021/06/25/gutjnl-2021-325010

突飛な発想!?うんち移植とは

世界の一部ではうんち移植(正式には「便微生物移植」)と呼ばれる治療法が研究されています。

これは「健康な人の腸内細菌を患者の腸に移植する」という療法であり、主に安全性を確認した便を希釈して投与する方法と、培養した腸内細菌を投与する方法があります。

便微生物移植
便微生物移植 / Credit:Depositphotos

では、「他人のうんちを移植する」という発想はどのように生まれたのでしょうか?

そもそもヒト腸内には数百~千種類の細菌が生息しており、免疫系に大きな影響を与えています。

そして一部の疾患を患っている人は、腸内細菌の数や種類が少なかったり、バランスが崩れていたりします。

それらの疾患には薬物治療が効果的でない場合もあり、腸内細菌のバランスを正常に戻す方法として「腸内細菌の移植」が検討されてきました。

しかし、現段階で培養法が確立できている種類はわずか20%程度です。

そこで「健康な人の腸内細菌をそのまま移植する」方法が考案されました。

ちなみに、抗生物質が効かなくなったクロストリジウム・ディフィシル腸炎患者には、便微生物移植が効果的だと報告されています。

つまり薬が効かない疾患を治療する一つの可能性として、うんち移植が研究されてきたのですね。

では世界中の人々が苦しんでいる新型コロナウイルスには、うんち移植が効果的だと言えるのでしょうか?

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