3つの性が見つかった藻類「プレオドリナ」
3つの性が見つかった藻類「プレオドリナ」 / Credit: Kohei Takahashi et al., Evolution(2021)
biology

藻類では初めて「3つの性別」を持つ種が確認される! 両性への進化の途中である可能性も

2021.07.15 Thursday

ひとつの種が、生物学的な意味で、3タイプの性を持つことはそれほど珍しくはありません

陸上植物や無脊椎動物には、メス・オス・両性の共存する種が存在します。

一方で、藻類や菌類のようなシンプルな生物には、いまだ見つかっていません。

しかし今回、東京大学の20年以上にわたる研究により、プレオドリナ」という緑藻類に3つの性別を持つ種が確認されました

藻類、菌類では初めてのことです。

研究は、7月12日付けで科学誌『Evolution』に掲載されています。

Scientists Discover The First Known Algae Species With Three Distinct Sexes https://www.sciencealert.com/scientists-have-discovered-the-first-algae-to-have-three-distinct-sexes
Three sex phenotypes in a haploid algal species give insights into the evolutionary transition to a self-compatible mating system https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/evo.14306

3つの性を持つ初の藻類

藻類には、雌雄異株(ヘテロタリック)雌雄同株(ホモタリック)の場合があり、前者はオスとメスの2つの性を、後者は両性という1つの性を持つとされています。

研究チームは、神奈川県にある相模湖川水系の湖で長期のフィールド調査を続けており、2006年には、新種「プレオドリナ・スターリー(学名:Pleodorina starrii)」を発見していました。

プレオドリナ・スターリーは雌雄異株(ヘテロタリック)であり、オス株とメス株しかないものと考えられています。

ところが同じ湖から、ひとつの株の中でオス・メス両方の配偶子を作る両性型のプレオドリナ・スターリーが、過去10年間で2回見つかっているのです。

そこでチームは、本種のオス・メス株と両性株の比較分析、および交配実験を行いました

オス群体(C)、メス群体(D)、精子束の到達したメス群体(E)
オス群体(C)、メス群体(D)、精子束の到達したメス群体(E) / Credit: Kohei Takahashi et al., Evolution(2021)

まず、3つの株の間で、形態や分子レベルでの差は見られませんでした。

それから、オス・メス株と両性株の交配実験では、配偶子がくっついて接合子を作るプロセスと、その子孫の生存率が、ふつうのオス・メス株間での交配とほとんど同じ結果が得られています。

このことから、両性株もプレオドリナ・スターリーと同一であり、本種には、オス・メス・両性の3つの性別が存在することが証明されました

手漕ぎボートで繰り出す相模湖の調査
手漕ぎボートで繰り出す相模湖の調査 / Credit: 東京大学大学院理学系研究科(2013年6月野崎撮影)

これについて研究チームは、本種がオスとメスに分かれている種から両性型の種へと進化している初期段階にあるのではないか、と推測しています。

緑藻類ではこれまで、いくつかの系統で雌雄異株(ヘテロタリック)から雌雄同株(ホモタリック)への進化が確認されていますが、その初期にどんなことが起きていたかは分かっていません。

今回の研究成果は、オス・メス〜両性型への進化や、3つの性別を持つ藻類を理解するための貴重な土台となるでしょう。

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