サイボーグ土壌
サイボーグ土壌 / Credit:Edith C. Hammer(Lund University)_‘Cyborg soil’ reveals the secret microbial metropolis beneath our feet(2021)
geoscience

半分がマイクロチップで構成された「サイボーグ土壌」が開発される

2021.07.26 Monday

スプーン一杯分の土の中には、地球上の人間よりも多くの微生物が存在しています。

それら微生物の研究を行うためには、野外からいくらか土のサンプルを採取して実験室で調査しなければいけません。

しかし実験室のサンプルだけでは、本当の自然環境における微生物の働きを知ることができません。

そこで、スウェーデン・ルンド大学(Lund University)生物学部に所属するエディス・ハンマー氏ら研究チームは、マイクロチップを含んだ「サイボーグ土壌」を開発しました。

自然界の土壌に混入させたチップにより、本来の微生物活動が記録できるようになったのです。

研究の詳細は、7月20日付の科学誌『Communications Biology』に掲載されました。

‘Cyborg soil’ reveals the secret microbial metropolis beneath our feet https://theconversation.com/cyborg-soil-reveals-the-secret-microbial-metropolis-beneath-our-feet-164748
Microfluidic chips provide visual access to in situ soil ecology https://www.nature.com/articles/s42003-021-02379-5

自然と人工物の混合「サイボーグ土壌」

土壌の細孔構造
土壌の細孔構造 / Credit:Tim Burykin(Youtube)_Flight through the pore network of a 1mm soil fragment(2011)

開発されたサイボーグ土壌は、半分が本物の土、もう半分はマイクロチップで構成されています。

このチップは自然界の土壌の細孔構造を模して設計されているため、本物と同様に「微生物たちの都市」として働きます。

つまり本来の土壌では微生物が様々な場所に住み着いたり、橋のような移動経路を作って移動したりしていますが、サイボーグ土壌でも同様の活動が見られるのです。

しかも地中のミクロ世界では、私たちの住むマクロの世界とは物理法則の影響力が異なります。

例えば、ある場所に留まっていた細は水分子の働きで押されて移動させられることがあります。

また小さな気泡が、周囲の水の表面張力によって、微生物では乗り越えられない障壁となることもあります。

つまりサイボーグ土壌から得られる記録を解析することで、自然界特有の微生物活動を把握できるのです。

そして実際にチームは、サイボーグ土壌を自然の土と充分な期間馴染ませることで、マイクロチップにも「微生物によって作られる都市」を確認しました。

次ページ微生物たちは「真菌の高速道路」で移動していた

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