微生物たちは「真菌の高速道路」で移動していた
サイボーグ土壌による微生物観察の結果、マイクロチップにも自然界の土壌に存在する単細胞生物、線虫、小型節足動物、細菌など多様な生態系が見られました。
また植物の根のように地下に伸びる真菌の菌糸は、サイボーグ土壌の孔の奥深くにまで到達しており、本物の土壌とマイクロチップをつなぐ「高速道路」のような働きをしていました。
実際、細菌が「真菌の高速道路」をたどって新しい孔へと移動する様子が観察されています。
また細菌だけでなく、菌糸の周りに生息する原生生物も「真菌の高速道路」で移動すると判明。
これは今までに全く知られていない現象でした。
さらにチームはマイクロチップの数千の孔と数百の移動経路を調査することで、どれほど頻繁に微生物が移動しているか把握することに成功。
これにより、菌糸が多種多様な微生物を分散させることや、エサを探す際に役立っていることが分かりました。
また土壌微生物の生息環境を形成するのは、雨や水などの物理的な力だけではないことも判明。
例えば菌類は菌糸の先端を使って、通路を開いたり塞いだりしていました。
さらに繊毛虫のような他の生物も、エサを探すために土壌を掘って整地していたとのこと。
ハンマー氏は、今回の研究が「自然界の現地調査と実験室での研究を結びつける」ことに役立つと考えています。
また将来的には微生物に対する理解が、「私たちの認識」を変化させることを期待しています。
絶滅危惧種に認定されている大きな動物と同じように、土壌も微生物も大切で保護すべき対象として見てほしいのです。