火星南極の氷冠。この下には氷底湖があるとされていたが…
火星南極の氷冠。この下には氷底湖があるとされていたが… / Credit:NASA/JPL/MSSS
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火星の地下にあると予想された「液体の湖」は、凍った粘土だったという研究

2021.08.02 Monday

2018年、火星探査機「マーズ・エクスプレス」は火星南極を覆う氷冠の下に明るいレーダーの反射を確認しました。

これは分析の結果、液体の水であるとわかり、火星の地下には液体の湖がいくつも存在すると発表されました。

しかし、先月発表された研究は、その分析結果に疑問を投げかけています。

カナダのヨーク大学などの研究チームは、データを詳しく調査した結果、レーダー信号は水ではなく粘土に反射された可能性が高いと報告しています。

残念ながら微生物の住処となりうる地下の湖は、存在していない可能性が高そうです。

研究の詳細は、科学雑誌『GeophysicalResearchLetters』にて7月29日に発表されています。

Clays, Not Water, Are Likely Source of Mars ‘Lakes’(NASA) https://www.nasa.gov/feature/jpl/clays-not-water-are-likely-source-of-mars-lakes
A Solid Interpretation of Bright Radar Reflectors Under the Mars South Polar Ice https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2021GL093618

火星南極の氷底湖

NASAのマーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した火星南極の氷床
NASAのマーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した火星南極の氷床 / Credits: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/JHU

火星に液体の状態を保ったは存在するのか?

これは地球外で初めて生命を見つけ出せる可能性のある場所として、非常に注目されているテーマです。

しかし、火星表面は乾いた荒野で、極地は二酸化炭素などが凍りついたドライアイスの氷冠で覆われていて、液体の水は見当たりません。

こうした中、2018年に欧州宇宙機関 (ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」が、軌道上からのレーダー調査で発見したのが、火星地下の明るいレーダー反射でした。

レーダー信号は、岩や氷を貫通し、さまざまな材料にぶつかることで変化した信号を反射してきます。

分析の結果、その明るい反射は液体の水であると発表され、火星南極を覆う氷冠の地下約1.6kmあたりには氷底湖があると考えられるようになりました。

これはさほど無理のある理論ではなく、地下水や地底湖は地球の至るところで見つかる上、凍りついた極寒の表面化でも液体のまま保存された水が見つかることがあります。

地球上でも南極の氷床下で液体の湖「ボストーク湖」が発見されています。

地球で最大の氷底湖。ボストーク湖の断面模式図。
地球で最大の氷底湖。ボストーク湖の断面模式図。 / Credit: Nicolle Rager-Fuller / NSF

火星の氷の下で液体の水が保たれている理由については、氷の圧力で融点が上昇したことや、地熱の影響、また湖の塩分濃度が非常に高いためだと説明されていました。

しかし、こうした研究が示したのはレーダー反射のデータでしかなく、液体の水があるという確かな証拠はありませんでした

さらに、マーズ・エクスプレスのその後の調査では、この液体の水を示す明るいレーダー反射が、南極の非常に表面に近い極寒の位置からも見つかっているのです。

気候観測のデータと比較すると、その位置で水が液体の状態を保つことは不可能であり、一般的な観測情報と結果が矛盾しています。

色のついた点は、火星南極冠で発見された明るいレーダー反射の場所。中には非常に地表に近いポイントもある。
色のついた点は、火星南極冠で発見された明るいレーダー反射の場所。中には非常に地表に近いポイントもある。 / Credits: ESA/NASA/JPL-Caltech

そのため、このレーダー反射は液体の水以外の、何か別のものの反応を勘違いしてるのではないかと、今回の研究者たちは考えたのです。

次ページ液体の水と同じレーダー反射を示すもの

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