キリンは「母系社会」だった?
研究チームは、デジタルカメラでの追跡観察と最新のデータ解析手法の導入、それから約400件の先行研究を分析し、キリンが予想されていた以上に複雑な社会性を持つことを明らかにしました。
まず、大きな発見として、キリンは3〜9頭の小グループで密接に行動することが判明しています。
その中には、関係の深い成熟したメスのペアが含まれていることが多く、中には6年間も一緒に観察されているペアや、少なくとも15年以上の関係が続いている母と子のペアもありました。
これらの小グループは、最大で3世代にわたる血縁関係で構成されており、成熟したメスは、他の母親の子の世話を手伝ったり、赤ちゃんの死を一緒に嘆くこともあったようです。
興味深い点は、大人のメスがグループの首長となるケースが多く、オスは往々にして集団から離れていることでした。
これは飼育下でもよく観察されており、キリンが母系社会を形成することを示しています。
キリンは比較的長寿の動物で、メスの寿命は平均して30歳、現時点で知られている最大の繁殖年齢は20歳です。
つまり、キリンは出産を終えてから10年ほど時間が残されており、ここが祖母の世代に当たると考えられます。
研究主任のゾーイ・ミュラー氏は「これは、キリンが高度な社会システムを持ち、その複雑さはゾウやクジラ、チンパンジーに匹敵することを示す」と述べています。
一方で、こうした複雑な社会システムには、高い認知機能とコミュニケーション能力が必要ですが、まだ、キリンにその能力があるかどうかは確かめられていません。
その調査が難しい要因として、キリンの「大人しさ」が挙げられます。
キリンは騒がしい動物ではなく、大きな身振りでコミュニケーションを取ることが少ないです。
ただ夜になると、口笛やハミング、うなり声などをよく上げるので、それがコミュニケーション解明の指標となるかもしれません。
しかし残念なことに、キリンの個体数は1985年以来、40%も減少しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「 危急種(vulnerable、絶滅の危険性が高い)」に指定されています。
ミュラー氏は「キリンの社会性やコミュニケーション能力を理解することで、より安全で効果的な保護策が見つかるかもしれない」と述べています。