原因の特定できない男性不妊が90年以降増加傾向にあると専門医はいう
原因の特定できない男性不妊が90年以降増加傾向にあると専門医はいう / Credit:canva
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「男性の不妊」が1990年以降から激増している、少子化問題は未婚の人が増えているだけではない? 

2021.08.10 Tuesday

少子化問題は何も日本だけの問題ではなく、現在多くの諸外国でも見られている傾向です。

そして、その原因となるかどうかはまだ明確ではありませんが、アメリカの生殖医療の専門医によると、男性不妊の割合が増加傾向にあり、その50%近くが不妊の原因を特定できていないと述べています。

バージニア大学泌尿器科准教授ライアン・P・スミス氏によると、その原因はもしかすると大気汚染、農薬、電子機器による放射線など環境毒性にあるかもしれないといいます。

単にパートナーがうまく見つけられないというだけでなく、全体的に人類の生殖能力が弱っているのだとしたら、それは由々しき問題です。

Male fertility is declining – studies show that environmental toxins could be a reason(The Conversation) https://theconversation.com/male-fertility-is-declining-studies-show-that-environmental-toxins-could-be-a-reason-163795
The question of declining sperm density revisited: an analysis of 101 studies published 1934-1996. https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/ehp.00108961 Temporal trends in sperm count: a systematic review and meta-regression analysis https://academic.oup.com/humupd/article/23/6/646/4035689 不妊治療について知っていただきたいこと(恵愛生殖医療病院) https://www.tenderlovingcare.jp/gairai/for_men

男性が要因となる出生率の低下

出生率の低下について、日本では主に未婚者の増加にスポットが当てられることが多く、不妊症が着目されることはあまりありません。

当然結婚して子供を作ることに興味のない人が多いことは、大きな要因と考えられます。

しかし、海外では望んでも子供が生まれない不妊症の増加についても多くの報告があがっているのです。

不妊症とは、避妊せずに定期的な性交をおこなっているにも関わらず、カップルが1年間妊娠できない状態と定義されています。

米国では、現在8組に1組のカップルが不妊症に悩んでいます。

不妊症といわれたとき、自然と女性側の問題と考えてしまう人も多いかもしれませんが、当然半分の原因は男性側にあります。

男女双方の要因が絡む場合もありますが、男性側が原因であった場合はこれを男性不妊症と呼びます

不妊症は男女双方の要因が絡むが、男性が原因の場合男性不妊症と呼ばれる
不妊症は男女双方の要因が絡むが、男性が原因の場合男性不妊症と呼ばれる / Credit:depositphotos

男性側の出産に関する評価を行う場合、それは精液分析が基礎となります。

精子数(男性が生成する精子の総数)と精子濃度(精液1mlあたりの精子の数)は一般的な指標とされていますが、これだけでは出産の最適な予測因子となりません。

より正確に測定するためには、精子の運動率(泳いだり動いたりできる精子の割合)を調べます

男性不妊症は、肥満からホルモンの不均衡、または遺伝病など、さまざまな要因が影響すると考えられますが、ほとんどの原因に対して役立つ治療法が存在しています。

ところが、1990年以降、研究者はある異常な傾向が発生していることに気づきます。

それは男性不妊症について、30%~50%近い割合が原因を特定できなくなっていたのです。

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