3Dバイオプリントされた膠芽腫モデルの顕微鏡画像
3Dバイオプリントされた膠芽腫モデルの顕微鏡画像 / Credit:Ronit Satchi-Fainaro(TAU)_Microengineered perfusable 3D-bioprinted glioblastoma model for in vivo mimicry of tumor microenvironment(2021)
brain

患者の「脳腫瘍を3Dプリント」して治療法をテストできる技術が登場

2021.08.20 Friday

脳腫瘍の一種である膠芽腫(こうがしゅ)は、脳や脊髄にできる進行性のがんです。

治療が非常に難しく、平均余命は数か月~2年と言われています。

イスラエル・テルアビブ大学(TAU)に所属する生理学者ロニット・サッチフェイナロ氏ら研究チームは、患者の細胞から「本物のように活動する腫瘍モデル」を3Dバイオプリントによって再現しました。

これにより効果的な治療法の特定と新薬開発が容易になると考えられます。

研究の詳細は、8月18日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

Scientists 3D Printed a Deadly Brain Tumor for the First Time https://interestingengineering.com/scientists-3d-printed-a-deadly-brain-tumor-for-the-first-time?utm_source=rss&utm_medium=article&utm_content=19082021 3D Printing Takes on Brain Cancer https://english.tau.ac.il/news/3d_printing_brain_cancer
Microengineered perfusable 3D-bioprinted glioblastoma model for in vivo mimicry of tumor microenvironment https://advances.sciencemag.org/content/7/34/eabi9119

脳腫瘍の新薬開発は難しい

現在、膠芽腫は部分的な摘出や、化学療法・放射線療法によって治療されますが、患者の負担は大きく、治療自体も非常に難しいと言われています。

そのため多くの患者や医師は、膠芽腫をターゲットにした新薬の開発に期待を寄せています。

ロニット・サッチフェイナロ氏
ロニット・サッチフェイナロ氏 / Credit:Ronit Satchi-Fainaro(TAU)_3D Printing Takes on Brain Cancer(2021)

ところが現在の薬剤開発は非常に難しく、開発プロセスには膨大な時間がかかります。

この難しさは実験室と体内の違いによって生じ、サッチフェイナロ氏はそのことを次のように説明しています。

がんは他のすべての組織と同様に、ペトリ皿や試験管での挙動と、人体の中での挙動が全く異なります」

「実験薬の約90%が臨床試験で失敗しますが、これは実験室で得られた作用が患者で再現されないためなのです」

成功率10%の実験薬をに打ち込みたい人などいないでしょう。

膠芽腫の新薬開発がなかなか進まないのも納得できますね。

そこでチームは、人体の挙動を実験室に持ってくるための大胆な技術を開発しました。

患者そっくりの「活動する脳腫瘍モデル」を3Dバイオプリントで実験室に再現するのです。

次ページ3Dバイオプリントされた脳腫瘍モデルで新薬実験がはかどる

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