鳥のヒナは歌い方を卵の中で聞きながら学習していた
鳥のヒナは歌い方を卵の中で聞きながら学習していた / Credit:canva,ナゾロジー編集部
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ヒナは親鳥の声を「卵の中から」学習していた

2021.09.12 Sunday

よく赤ちゃんはお腹の中で外の音を聞いていると言われますが、生まれる前の胎児はどの程度外界の情報に反応しているのでしょうか?

オーストラリア・フリンダース大学(The Flinders University)の研究チームは、まだ卵の中にいる鳥の胎児の心拍数などを測定することで、彼らが親鳥の声に反応していることを発見

鳥のヒナは生まれた段階ですでに親の鳴き声や鳴き方を理解しているようだと言われていましたが、その理由は卵の中ですでに学習が始まっていたためだと明らかになりました。

研究の詳細は、9月6日付で科学雑誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に掲載されています。

Baby birds tune in from the egg https://news.flinders.edu.au/blog/2021/09/09/baby-birds-tune-in-from-the-egg/
Prenatal auditory learning in avian vocal learners and non-learners https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstb.2020.0247 Baby Birds Start Learning Songs From Inside Their Snug Eggs, Study Reveals https://www.sciencealert.com/baby-birds-start-learning-their-songs-from-inside-their-snug-eggs-study-reveals

音の学習はいつ始まるのか?

ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ
ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ / Credit:D Colombelli-Négrel, Flinders University

動物の中には、さまざまな発声が可能で、発声学習によって種族の発声パターン(歌や言語)を学んで発声するものと、もともと種族固有の音しか出せない発声非学習のものが存在します。

ヒトの言語や鳥の歌などは、親などの発声パターンを真似する発声学習によって後天的に獲得されたものです。

そしてこの、発声学習をする生き物は鳥類・哺乳類の中で、霊長類・鯨類・鰭脚類(ききゃくるい)・コウモリ・鳴禽類(めいきんるい)・オウム・ハチドリのわずか7つしかいません。

なお霊長類の中で、発声学習ができるのは人間だけです。

こうした生き物たちは自分の種族以外の音も真似して発することができるため、自分の種族の正しい音を早い段階で認識している必要があります。

特に鳥たちは生まれた瞬間から自分たちの親の声を理解している節があり、それ以外の騒音とは区別できているようです。

しかし、殻を破って外へ出た瞬間に、正しい種族のメロディーが聞こえてくるとは限りません。

ヒナはいつ親鳥の音を識別できるようになっているのか?
ヒナはいつ親鳥の音を識別できるようになっているのか? / Credit:Dr Andrew Katsis

近年の研究では、生まれたあとに繰り返し聞くことで種固有の音を学ぶという発声学習のこれまでの考え方は単純すぎるのではないか? という提言もされています。(Petkov et al.,2021)

また、歌の指導を受けなかった鳴鳥でも、自分の種の音と、異なる種の音には異なる神経反応を起こすことが示されています。

このことから、今回の研究者たちは、鳥たちが卵から孵化するかなり前の段階で内に「音声テンプレート」を取得しているのではないか? と考えました。

そこで、研究チームは2012年から2019年までの7年間で、5つの異なる種類の鳥たちの卵にさまざまな鳴き声を聞かせる実験を行いました。

調査された中の2種は、ウズラとペンギンで、これはどちらも発声非学習の鳥ですが、残りは発声学習を行う鳥でした。

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