全身が「円錐形の鋲(びょう)」に覆われていた
カルノタウルスは、白亜紀後期(約7200万〜6990万年前)に、今日の南米に生息した肉食恐竜のグループです。
全長は7.5~9メートル、体重は推定1.35トンに達し、目の上にそれぞれ円錐状のツノが生えています。
そのことから、”肉食の雄牛”を意味する「カルノタウルス」と名付けられました。
本研究に用いられたのは、1984年にアルゼンチンの著名な古生物学者、ホセ・ボナパルト氏が発見した「カルノタウルス・サストライ(学名:Carnotaurus sastrei )」という種の皮膚化石です。
化石は、アルゼンチンとチリにまたがるパタゴニアのチュブット州で産出したもので、ウロコ状の外皮とともに保存されていました。
カルノタウルスは皮膚化石が発見された初の肉食恐竜であり、この化石は、これまで見つかった獣脚類(Tレックスなどが属する大型肉食恐竜のグループ)の皮膚のなかで最も完全に保存されたものです。

多くの古生物学者がこの皮膚化石に注目する一方で、詳細に研究されたことはありませんでした。
そこで、アルゼンチンの研究機関・Unidad Ejecutora Lilloのクリストフ・ヘンドリックス氏と、オーストラリア・ニューイングランド大学(University of New England)のフィル・ベル氏が共同で皮膚の調査を開始。
首元や肩、腹部、尻尾に当たる皮膚を調べた結果、これまで考えられていたより多様な形をしていたことが判明しました。
まず、直径2~6.5センチの円錐形の鋲(びょう)がランダムに分布し、さまざまな凹凸を形作っています。
そして、その周りを1.4センチ以下の細長い菱形、または円錐に近い形の小さなウロコのネットワークが囲んでいました。
羽毛の痕跡はまったくなく、全身が同じウロコ状の皮膚になっていると考えられます。

カルノタウルスが活動的な捕食者であったことを踏まえると、ウロコ状の皮膚は、現代の変温動物(爬虫類や魚類、昆虫)と同じように、体温調節に大事な役割を果たしていたのではないかと考えられています。
変温動物は、基本的に外気温と同程度の体温でいるため、熱を一定に保つ必要がなく、エネルギー消費もかなり少なく済みます。
そのため、体温が多少変動しても、正常に活動できる能力が維持されるのです。
ヘンドリックス氏は「特に、カルノタウルスのように1000キロを超える大きな体格では、余分な熱を逃がす必要性があったことから、羽毛のないウロコ状の皮膚が有効だったのでしょう」と述べています。
最近の復元イメージでは、首回りや背中にフサフサの毛を生やしたティラノサウルスが描かれたりしますが、少なくともカルノタウルスは、今まで通りの毛なしで問題ないようです。
羽毛の有る無しは、北米と南米の気候の違いも関係するのかもしれません。