人種差別は脳の健康に悪影響を及ぼすかもしれない
人種差別は脳の健康に悪影響を及ぼすかもしれない / Credit:Depositphotos
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人種差別のトラウマは虐待や暴行より強い反応を脳に引き起こす

2021.10.31 Sunday

人種差別は世界的な問題の1つですが、それが健康に与える影響はあまり知られていません。

しかし最近、アメリカ・エモリー大学(Emory University)に所属する臨床神経心理学者のネガール・ファニ氏ら研究チームは、人種差別が脳に虐待や暴行を超える悪影響を及ぼしていると発表しました。

生涯を通して人種差別を経験してきた人は、脅威に対して脳が強く反応し、精神的・身体的健康リスクが高まるおそれがあるのです。

研究の詳細は、7月28日付の学術誌『JAMA Psychiatry』に掲載されました。

Brain scans of Black women who experience racism show trauma-like effects, putting them at higher risk for future health problems https://www.psypost.org/2021/09/brain-scans-of-black-women-who-experience-racism-show-trauma-like-effects-putting-them-at-higher-risk-for-future-health-problems-61867
Association of Racial Discrimination With Neural Response to Threat in Black Women in the US Exposed to Trauma https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2782454

健康格差の原因の1つは人種差別かもしれない

人種差別によるストレスは健康格差を生んでいるかもしれない
人種差別によるストレスは健康格差を生んでいるかもしれない / Credit:Depositphotos

ある報告によると、黒人は白人に比べて、卒中、認知機能低下、アルツハイマー病などの神経変性疾患のリスクが高いようです。

もちろんさまざまな要因が関係していますが、ストレスによる影響は無視できません。

世界的な社会問題である「人種差別」は当人に強いストレスを与え続けるため、この分野も考慮すべきでしょう。

しかし、人種差別と健康の関連性を扱った研究はほとんどありません。

そこでチームは、人種差別が脳機能や健康に与える影響を調査することにしました。

対象となったのは、アフリカ系アメリカ人(黒人)の女性55人です。

彼女たちは、「幼少期の虐待」「身体的・性的暴行」または「人種差別による不当な扱い」のどれかを経験してきた人々です。

実験では、彼女たちにストレスを感じる映像を見てもらいながら、注意力を必要とする課題に取り組んでもらいました。

そしてチームはその間、彼女たちの脳活動をfMRIで観察しました。

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