動物も「過去に起こった出来事を心のなかで再生できる」という証拠が初めて発見される

biology 2018/06/17

Point
・人間以外の動物でもエピソード記憶を呼び起こせることが初めて示された
・アルツハイマー病の治療薬の開発で、エピソード記憶の回復能力を動物実験で確認できるようになる

人間以外の動物でも「過去に起こった出来事を心のなかで再生できる」ことが初めて示され、“Current Biology”誌に掲載されました。この発見は、アルツハイマー病の新しい治療薬を開発する手助けになるでしょう。

今まで動物実験で記憶を評価するために使われていたのは、もっぱら場所に関する記憶でした。エピソード記憶よりも、そちらのほうが評価するのが簡単だったからです。しかし、アルツハイマー病のような記憶に関わる病気で障害を受けるのは、どのような順番で物事が起きたのかを心のなかで再生するエピソード記憶です。よって、アルツハイマー病の薬を開発し、動物実験で場所の記憶を評価しても、正しく効果が見れない可能性があります。そこで、動物におけるエピソード記憶の再生を評価できる実験系が必要とされていました。

研究を率いたのはインディアナ大学心理学・脳科学部教授ジョナサン・クリスタル氏。研究チームは記憶から過去の特定の出来事を再生する能力があることを評価するために、1年間かけて13匹のラットに12種類までの匂いのリストを覚えさせる訓練をしました。ラットは異なった匂いのする「アリーナ」に置かれました。そして、リストの最後から2番め、あるいは最後から4番目の匂いを識別できた場合にだけ報酬が与えられます。

チームは各テストの前にリスト中の匂いの数を変えました。そうすることで、ラットがきちんとリストをもとにした自分の位置を識別しており、匂いだけをもとに識別してるのではないことが証明できます。つまり、ラットが匂いのリストを、すべて「思い出す能力」によって認識していることを示せるのです。

トレーニング後のラットは、全トライアルを通して87%の確率でタスクをこなすことが出来ました。この結果は、ラットがエピソード記憶の再生を用いることへの強力な証拠となります。

さらなる実験によってラットの記憶が長期に渡って持続し、他の記憶によって「妨害」されることに抵抗することが示されました。この2つの特徴はエピソード記憶の特徴と一致します。また、一時的にエピソード記憶の部位である海馬の活性を抑えて実験を行い、ラットがタスクをこなすのに脳のこの領域を使っていることが確認されました。

新たな遺伝学のツールを使って、アルツハイマー病に似た神経症状を示すラットが利用可能になりつつあります。この研究の成果は、アルツハイマー病のエピソード記憶の障害を治せる薬の開発に役に立つと期待されています。

 

まるでSFの世界。ウミウシ間で「記憶の移植」に成功

 

via: Featured/ translated & text by SENPAI

 

関連記事

亡くなった人の記憶を蘇らせる方法が判明

「物理」を学ぶと脳が変化する?脳内マッピングでわかった真実

前世で「ファラオの愛人」だった記憶があるエジプト考古学者「ドロシー・イーディー」

 

SHARE

TAG

biologyの関連記事

RELATED ARTICLE