1億2500万年前の化石から「恐竜細胞」の採取に成功
1億2500万年前の化石から「恐竜細胞」の採取に成功 / Credit: Image by ZHENG Qiuyang(scitechdaily) – Potential Remnants of Original Dinosaur DNA Discovered in Exquisitely Preserved Dinosaur Cells(2021)
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恐竜の化石から「DNAとタンパク質の複合体」の染色に成功か

2021.09.29 Wednesday

2021.09.28 Tuesday

中国の科学研究チームはこのほど、約1億2500万年前の恐竜の化石中から、精巧に保存された軟骨細胞を単離し、そこに含まれる生体分子の残骸と、クロマチン(細胞内にあるDNAとタンパク質の複合体)の抽出に成功したと発表しました。

映画のように、恐竜をこの世に復活させるにはDNAが必要です。

今回の結果は、そんな人類の夢を実現させるための大きな一歩となるかもしれません。

研究は、中国科学アカデミーの脊椎動物古生物学・古人類学研究所(IVPP)および山東省・天宇自然博物館(STM)により、9月24日付けで学術誌『Communications Biology』に掲載されました。

Potential Remnants of Original Dinosaur DNA Discovered in Exquisitely Preserved Dinosaur Cells https://scitechdaily.com/potential-remnants-of-original-dinosaur-dna-discovered-in-exquisitely-preserved-dinosaur-cells/
Nuclear preservation in the cartilage of the Jehol dinosaur Caudipteryx https://www.nature.com/articles/s42003-021-02627-8

細胞から「クロマチン」の染色に成功か

本研究では、中国東北部の遼寧(りょうねい)省にある地層で採取された「カウディプテリクス(Caudipteryx、尾に羽毛を持つもの)」の化石を調査対象としました。

カウディプテリクスは、白亜紀前期(約1億4400万〜9900万年前)に存在した羽毛恐竜で、全長は約1メートル。2足歩行で、長い尾羽と羽毛の生えた前肢を持ちますが、飛ぶことはできませんでした。

また、この場所は「熱河層群(Jehol Group)」と呼ばれ、地層の厚さは約1600〜2600メートル、上部が約1億1000万年前で、下部が約1億3000万年前に生成されたものです。

採取された化石は、約1億2500万年前のものと推定されています。

カウディプテリクスの復元イメージ
カウディプテリクスの復元イメージ / Credit: ja.wikipedia

研究チームは、右大腿骨の化石から軟骨細胞の一部を取り出して脱灰し、顕微鏡や化学的手法を用いて分析しました。

(脱灰:生物の硬い組織からカルシウム成分を溶出させて軟化し、実験や調査を容易にするための手法)

その結果、カウディプテリクスの死後、すべての細胞が珪化によってミネラル化していたことが判明しました。珪化作用が、細胞の優れた保存を可能にしたと考えられます。

(珪化:生物の遺体が地中の珪酸の浸透で珪酸質に変わること)

さらにチームは、抽出されたいくつかの細胞を「ヘマトキシリン」という化学物質で染色しました。

この紫色の薬品は、細胞の核に結合することで知られます。

サンプルを染色したところ、1つの細胞に紫色の核と、それよりも濃い紫色の糸のようなものが見つかりました。

これは、1億2500万年前の恐竜の細胞核が、生前の有機分子やクロマチンの糸を残しているほど保存状態が良いことを示唆します。

紫色に染色された軟骨細胞
紫色に染色された軟骨細胞 / Credit: Xiaoting Zheng et al., Communications Biology(2021)

クロマチンとは、本来、「細胞核内の染色されやすい物質」を指す言葉で、日本語では「染色質」と訳されます。

これと一緒によく耳にする「染色体(クロモソーム)」は、ある種の細胞分裂において、クロマチンが構造変換して生じるものです。

地球上のすべての生物の細胞内にあるクロマチンは、DNA分子が緊密に結合したものであり、遺伝子の発現や複製、修復にかかわっているとされます。

本研究の成果により軟骨細胞では核の化石化が起こりやすいことが示され、従来よりも長い時間でのDNA保存を理解する足がかりになるかもしれません。

研究を進めるには、今回使用した染色法よりもはるかに洗練された化学的手法を用いる必要があります。

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