木星の表面模様を代表する高気圧性の嵐の渦「大赤斑」
木星の表面模様を代表する高気圧性の嵐の渦「大赤斑」 / Credit:NASA, ESA, and A. Simon (Goddard Space Flight Center)
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木星の赤い斑点の渦はここ10年で加速していた

2021.10.03 Sunday

木星表面を覆う縞模様の中で、特に目を引く大赤斑。

これは何世紀にも渡って維持されている、時速数百kmで吹き荒れる猛烈な嵐の渦です。

ハッブル宇宙望遠鏡は、この嵐の渦を10年以上も観測し続けていますが、そこからこの渦の外周部の風が2009年から2020年にかけて最大8%も加速しているという事実を発見したのです。

一体この発見にはどんな意味があるのでしょうか?

この研究に関する論文は、8月29日付で科学雑誌『Geophysical Research Letters』に掲載されています。

HUBBLE SHOWS WINDS IN JUPITER’S GREAT RED SPOT ARE SPEEDING UP https://hubblesite.org/contents/news-releases/2021/news-2021-055
Evolution of the Horizontal Winds in Jupiter’s Great Red Spot From One Jovian Year of HST/WFC3 Maps https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2021GL093982

木星の嵐の渦

木星は赤茶色の縞模様が特徴的ですが、これらはすべて木星上空に浮かぶ雲であり、猛烈な勢いの風にのって惑星を吹き荒れています。

そんな木星の表面で有名なのが、赤い染みのように浮かぶ「大赤斑」と呼ばれる領域です。

これは木星大気圏で荒れ狂う巨大な嵐で、一説によると300年前から観測されているといわれています。

木星のサイズ感がよくわからないで見ているとそれほど大きくは感じないかもしれませんが、大赤斑の大きさは地球のほぼ2.5倍です。

地球の直径は1万2756キロメートルで、大赤斑の大きさは約3万9000キロメートル×1万4000キロメートルとされています。

木星大赤斑と地球をだいたい同じ縮尺で並べた画像
木星大赤斑と地球をだいたい同じ縮尺で並べた画像 / Credit:NASA / ESA

この飛んでもなく巨大な長期間続く木星の嵐は、風速が時速約650km(秒速350m)もあり、気温は-140℃というからすごい環境です。

大赤斑は循環する木星の風の隙間に生じていますが、これがどういった理由で発生したのか? どんな構造をしているのか? はまだ良くわかっていません。

地球の台風にも似ていますが、台風と呼べる構造の嵐なのかどうかもよくわかっていません。

そのため、ハッブル宇宙望遠鏡は定期的にこの大赤斑の観測を続けています。

そんな中で新たに発見されたのが、大赤斑の風速が中央と外周部で変化しているということでした。

木星大赤斑の風を示した画像。中心付近と外周部では風速が異なっており、外周部は加速しているようだ。いずれも反時計周りに回転している。
木星大赤斑の風を示した画像。中心付近と外周部では風速が異なっており、外周部は加速しているようだ。いずれも反時計周りに回転している。 / Credit:hubblesite,HUBBLE SHOWS WINDS IN JUPITER’S GREAT RED SPOT ARE SPEEDING UP

ハッブル宇宙望遠鏡の2009年から2020年にかけてのデータを比較したところ、嵐の外周部の風速は10年間で約8%も上昇していることがわかったのです。

嵐の中心部はずっと速度が遅く、のんびりクルーズを楽しんでいるような速度しか出ていない、とハッブルのサイトでは説明されています。

しかし、この嵐の回転が10年で8%加速したという情報には何の意味があるのでしょうか?

次ページこれは意味があるのか?

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