「ナスカの地上絵」より2000年も前に作られた
雄牛の地上絵は、トゥヴァ共和国南西部にあるホンデルグエイ(Khondergey)村の遺跡で発掘調査をしていた研究チームにより発見されました。
この遺跡は、初期青銅器時代の大規模な埋葬地の一部であり、紀元前2000年頃の陶磁器も出土しています。
3×4メートル四方の雄牛のジオグリフは、石や砂利といった耐久性のある自然物を地面に並べるようにして作られていました。
ジオグリフは主に、通常4メートル以上の大きなモチーフのことを指し、地面に素材を配置して作る方法と、地面の一部を削り取って作る方法との2パターンがあります。

これとよく似た古代芸術に「ペトログリフ」というものがありますが、こちらは地面ではなく、岩石の表面を彫刻して作られる比較的小さなロックアートです。
ジオグリフはこれよりずっと大きく、その多くが上空からでも目立つように作られます。
今回見つかった「雄牛の地上絵」は、頭を含む上半身の部分がすでに紛失している状態でした。
これは1940年代の道路工事で、知らずのうちに破壊されてしまったことが原因とのことです。
一方で、尻尾や後ろ足は保存状態も良く、当時の文化的背景を理解するのに非常に役立つサンプルとなっています。

雄牛のモチーフは、青銅器時代初期の中央アジアにおいて典型的なものでした。
その後、紀元前8〜3世紀のスキタイ文化になると、主要な動物モチーフは雄牛から鹿に取って代わられます。
発掘チームを率いた考古学者のマリナ・キルノフスカヤ氏は、次のように述べています。
「雄牛のペトログリフは、トゥヴァ共和国やその周辺地域でも過去に発見例がありました。
しかし、ジオグリフが見つかったのは初めてであり、中央アジア全体でも前例がありません。
私たちは、このユニークな雄牛が保護対象の一つとして今後も保存されることを望んでいます」

最も有名な地上絵は、南米ペルーにある「ナスカの地上絵」であり、製作年代は約2000年前と考えられます。
描かれた絵はどれもサイズが大きく、全長50メートルは普通で、中には180メートルに達するものもあります。
この他に、イングランド南部にある丘の斜面に描かれた「アフィントンの白馬(Uffington White Horse)」も有名な地上絵の一つです。
こちらは全長が110メートルで、製作年代が約3000年前とされています。


雄牛の地上絵は、これらよりサイズ面で見劣りするものの、製作年代は1000年以上も古いです。
そのため、人類がジオグリフを描くようになった歴史の理解にもつながるかもしれません。