専門家も嫉妬するほどの貴重な発見
ジュリアンさんが化石を発見した時、父親のブライアンさんは半信半疑で、川に戻すように勧めたと言います。
しかし、母親のメアリーさんの説得もあって家に持ち帰り、専門家に確かめてもらうことに。
そして、ミシガン大学(University of Michigan)の考古学研究チームの分析の結果、約1万2000年前に生きていたマストドンの右上臼歯であることが判明したのです。
サイズは大人の握りこぶしほどに達していますが、これでまだ幼い個体だったとされています。
マストドンは、ゾウ目マムート科に属する大型哺乳類で、マンモスやゾウに近似しています。
成熟個体の体高は2〜3メートルに達し、褐色の短い体毛に覆われていました。
約4000万〜1万1000年前まで、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどの各大陸に生存しましたが、氷河期の終わり頃に絶滅しています。

化石が発見された「ダイナソー・ヒル自然保護区」は元々、子どもと化石の縁が深い場所です。
保護区内では過去にいくつかの化石が出土していますし、また、目玉スポットである丘は、形が眠っている恐竜に似ていることから、地元の子どもたちが「ダイナソー・ヒル(恐竜の丘)」と呼ぶようになったことに由来します。
ミシガン大学・古生物学博物館のアビゲイル・ドレイク氏は「正直なところ、個人的にはジュリアンさんの発見に嫉妬しています。
化石の発見は、私自身が毎日できたらいいなと思っていることですから」と冗談交じりに悔しさを滲ませました。
その上で、「マストドンの化石は見つけるのが困難であるため、今回の発見はとても貴重なことです」と賞賛しています。
また、同博物館のコレクション・マネージャーを務めるアダム・ルートニー氏は「ジュリアンさんは、おそらく1万2000年ぶりにこの歯に触れた人間でしょう。
こうした歯の化石は、マストドンがどのような食物を摂取し、いかに暮らしていたかを知る手がかりとなります」と述べました。
当のジュリアンさんは、次のように話しています。
「実は化石を見つけた時は、100万ドルものお金がもらえると思ったんだ。だけど今それを考えると、とても恥ずかしい。
本当は考古学者に憧れていたけど、これは古生物学者になるためのサインだと思う」
今後、ジュリアンさんはどちらの道を進むかは分かりませんが、彼には化石のありかを嗅ぎつける特殊な才能があるのかもしれません。