新しい視覚脳インプラントは目を経由しない
新しい視覚脳インプラントは目を経由しない / Credit:Universidad Miguel Hernández de Elche,Proyecto Eduardo Fernández Jover
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脳に映像を直接送る「安全な脳インプラント」が開発される

2021.10.23 Saturday

Brain implant bypasses the eyes to help blind users “see” images https://newatlas.com/medical/blind-brain-implant/ NEW RESEARCH ALLOWS BLIND PEOPLE TO SEE SIMPLE SHAPES AND LETTERS https://ruvid.org/ri-world/new-research-allows-blind-people-to-see-simple-shapes-and-letters/
Visual percepts evoked with an Intracortical 96-channel microelectrode array inserted in human occipital cortex https://www.jci.org/articles/view/151331

目の不自由な人の視力を機械によって回復させる人工網膜などの研究が進められています。

ただ、既存の技術では眼球に対して処置を行うため、視神経自体に障害が起きている場合、適応することができません。

そこでスペインのエルチェ・ミゲル・エルナンデス大学UMHの研究チームは、目を使わずに、脳の視覚野を直接刺激して、知覚可能な映像を作り出す脳インプラントを開発

16年以上も全盲の状態だった57歳の女性に移植し、文字やモノのシルエットを認識させることに成功しました。

これはまだ実験段階の技術ですが、安全な脳への刺激で視神経を介さずに視力を得られることを示した最初の報告です。

研究の詳細は、10月19日付で科学雑誌『The Journal of Clinical Investigation』に掲載されています。

安全に視覚野を刺激する

目の不自由な人に対して「視覚をサポートする技術」は、研究が進んでいて、人工網膜を眼球に移植することで簡単な文字やパターンを認識させることに成功しています。

これは映像を取得するための網膜部分のみを機械で補い、あとはもともと体が持っている視神経を利用して視覚を回復させるものです。

しかしたとえば、網膜の進行した変性疾患、重度の緑内障、または視神経に害を及ぼす病状のある患者などは、こうした技術の恩恵を受けることができません。

へ情報を送る視神経自体に問題が起きている場合、周囲からの情報は視覚を処理する脳の部分へ直接送信する必要があるのです。

今回の研究チームは、2020年に動物(霊長類)の脳に1000を超える電極を備えたインプラントを移植し、モノの形や動き、文字を認識させることに成功しています。

ただ、動物は盲目だったわけではありません。

そこで、この研究をさらに前進させ、チームはボランティアで参加してくれた16年以上完全に盲目だった57歳の女性の脳に「微小電極」を移植しました。

視覚情報はメガネ型のデバイスに取り付けられた人工網膜によって、利用者の前方の景を取得します。

この情報がインプラントへ送信され、その電気刺激によって脳の視覚野が映像として解釈するのです。

実験の概要を示した図
実験の概要を示した図 / Credit:Eduardo Fernández et al.,The Journal of Clinical Investigation(2021)

脳へデバイスを移植するといわれると、非常にマッドで恐ろしい印象を受ける人も多いかもしれません。

しかし、今回の技術は非常に安全性の高い脳インプラントであるところが、重要なポイントとなっています。

インプラントの幅はわずか4mm、電極の長さは1.5mmで、96個の微小電極を備えています。

この極小電極は、大脳皮質の機能に影響を与えず、また隣接する非標的神経細胞も刺激することがありません。

また既存のデバイスに比べて、必要電流がはるかに少ないため、より安全に使用できる可能性が高まっているのです。

実際、実験が終了した6カ月後に、このデバイスは被験者から安全に取り外されています

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