小道具の銃が「空砲」でも危険な理由とは
小道具の銃が「空砲」でも危険な理由とは / Credit: jp.depositphotos
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映画撮影現場では、なぜ「小道具の銃」で死亡事故が起きてしまうのか?

2021.10.26 Tuesday

Yes, a gun shooting blanks can still kill you — and action movies are surprisingly dangerous https://www.zmescience.com/science/blanks-can-kill-22102021/

アメリカ・ニューメキシコ州で21日、西部劇映画『Rust』(原題)の撮影中に、主演のアレック・ボールドウィン氏が、小道具の銃を誤射し、監督のジョエル・ソウザ氏が重傷、撮影監督のハリナ・ハッチンス氏が死亡するという傷ましい事件が報道されました。

事件発生当初は状況が不明だったため、ネット上では空砲で死に至る事故が起きる可能性はあるのか? という問題が話題となっていました。

結局、のちの捜査によって今回の事件は、誤って小道具の銃に実弾が装填されていた事が原因の完全な人為的ミスだったと明らかになりましたが、専門家は「空砲でも死に至る危険性は十分ある」と指摘します。

映画の撮影現場では一般に「空砲」を用いますが、空砲だからと言って、必ずしも安全とは限りません。

過去には、映画の撮影現場で空砲でありながら発生した死亡事故が、実際に存在しているのです。

ここでは、空砲の仕組みや危険性から、過去に起きた事故とその原因を見ていきましょう。

空砲でも「死亡事故」が発生する原因

空砲は、必ずしも「弾が入っていない空の状態」を意味しません

空砲にはおもに2つのパターンがあります。

1つは、実弾は装填されていないが、火薬が入っているもの

もう1つは、実弾の代わりに紙や木片、プラスチック、フェルトなどを弾頭に使っているものです。

これにより、小道具の銃をよりリアルに見せることができます。

一方で、どちらの場合も取り扱いには要注意で、火薬が入っている空砲を撃つと、銃口から燃焼ガスが射出されます。

これが至近距離で体に当たると、大ケガでは済みません。

実際、1984年に、俳優のジョン=エリック・ヘクサム(Jon-Erik Hexums)が、火薬の入った空砲で死亡する事故が起きています。

彼は撮影中に、冗談で「小道具の銃を使ってロシアンルーレットをやろう」と言い出し、自らのこめかみに銃口を押し当て、引き金を引きました。

結果は悪い冗談では済まず、彼は26歳の若さで命を落としています。

また、紙や木片を弾頭に使ったものも、至近距離で撃つと命を奪う凶器となります

長距離の場合は、鉛を使った実弾と違ってはるかに軽いので、すぐに勢いを失って落下します。

ところが、至近距離で撃つと、人体に風穴をあけるには十分な威力がありますし、長距離で当たったとしても、打撲は免れられないでしょう。

ですから、空砲と言えど、絶対に人に向けてはいけません

空砲でも至近距離だと十分に危険
空砲でも至近距離だと十分に危険 / Credit: jp.depositphotos

さらに悪いことに、空砲には、発射音をより効果的にするため、実弾より多くの火薬が含まれていることがあります

ブルース・ウィリスは、映画『ダイ・ハード』(1988)の撮影中、特別に大きな音の出る空砲を顔の間近で撃ってしまい、聴力の3分の2を失ったという。

そして、今回のように、「空砲だと思っていたら実弾が入っていた」という事故も過去に例があります。

最も古い記録では1915年、映画『The Captive』(原題)の撮影中に、エキストラの一人が実弾の入ったライフルを誤射し、もう一人のエキストラを即死させています。

また、有名なものとしては1993年、映画『クロウ/飛翔伝説』の撮影中、ブルース・リーの実子であるブランドン・リーが、同じ理由で誤射され、死亡しています。

映画の撮影現場では今も、小道具の銃が原因となったキャストの大ケガやスタントマンの死亡事故が跡を絶ちません。

IATSE(国際映画劇場労働組合)の組員であるトーマス・ジュニア氏は、22日、撮影で銃をあつかうことの危険性を自身のTwitter上で指摘しました。

「1日12〜14時間以上働き、過労で疲労困憊のスタッフを急かして、できるだけ早く銃を準備させ、まともにトレーニングも受けていない出演者に手渡します。

(中略)小道具を扱うスタッフは、誰もが信頼できるプロですが、14時間以上も働きづめで疲れ果てた状態では、人為的なミスを犯してしまうのです」

今回の誤射は、リハーサル中に起きた事故であり、現在も関係者に当時の状況を聞いて、詳細を調査中とのこと。

こうしたことが起きないよう、映画業界も労働環境を再考する必要があるでしょう。

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